<Home> <Info. from Artists>

Artist Press:

TOP STORY:
>> アーティスト対談 Vol. 2: 是方博邦 & 和泉聡志
>> 「ヴィンテージ・ギターショップ 1G 訪問記」
>> 是方博邦 機材セッティング
>> 和泉聡志 機材セッティング


CLOSE UP:
>> 清水秀子インタビュー

LIVE REPORT:
>> 野獣王国 Live Report(17 August 2001 at Blues Alley Japan)
>> CORE ZONE (20 August 2001 at Blues Alley Japan)

 

 

CLOSE UP

清水秀子インタビュー

 

 

豊かで深みのあるヴォーカル魅力の清水秀子。その暖かく幅のあるヴォイスは聴くものをやさしく包み込む

清水秀子 プロフィール, スケジュール


普段の活動について
歌い手がミュージシャンのプレイを引き出してしまうような歌を・・・
ヴォーカルを教えるということ・・・
歌う時の息遣い・・・自然に「その人の話し方」で
音楽で伝えたいこと
アドバイス、トライしたいこと



大徳さん、関根さん、斎藤さんとコンスタントに・・・全然知らない人とも面白い




Q:普段の活動について教えてください?

レギューラーバンド・・・

清水:
バンドという形ではないけれど、10数年前くらいから大徳俊幸さん(Key)、関根英雄さん(Ds)、斎藤誠さん(Bs)というトリオでSometimeで月1回ずつコンスタントに・・・特に自分のバンド、ということではないけれど、現在はこれがベーシックな活動になっています。あとはレギューラーバンドとしてスタンダード、フュージョン、ポップスを織り交ぜたDream To Remember(リーダー:小野研二さん -Tp)をやっています。

ピットインに出始めの頃はボブ&シンガーズ(リーダー:佐山雅弘さん -Pf)というバンドをやっていて、これはかなり大きな楽器編成で歌も3人。ほとんど歌詞はなくて「楽器のパートとして声を使ってみる」という非常に実験的なバンドだったのね。そのときにコーラスみたいなものをちょっとカジッた感じで、それはもう研究会ね。

あとデコレーション(1982-1985)というバンドは、マイケル・ジャクソンとか、ダンスミュージックみたいなものばっかりやっていたの。そういうのが流行っていたころで、「4ビートばかりじゃなくて、好きな曲をやろう」って言って、カーニバルとかバレンタインで毎月やっていたのね。それで4ビートと併行して16ビートもやるようになって・・・それからは「もうなにやってもいいや」という感じになって・・・


ジャズセッション・・

清水:
とりあえず誰とでも一度はやってみようと思っています。一回やると誰とでも"大体お互いにお話がみえる"じゃない?その上で、その後関係が深まっていく場合もあるし、そうじゃないこともある、、、いろんな人と一緒にやる機会がもてるという意味でもライブハウスの仕事が結構おもしろいのね。

 

歌い手がミュージシャンのプレイを引き出してしまうような歌を・・・


Q:楽器演奏者がヴォーカリストがステージに立たれたとたん「バンドさん」になってしまう、それまでのテンションとは違うものになってしまう、という話を聞いた事がありますが、ヴォーカリストの立場としては、どう思われますか?

 

清水:
歌い手の方にだいたい責任がある、と思う。楽器の人ってすごく勉強しているのね。コード、スケール、リズム、アンサンブルのこと・・・。 ところが歌い手ってね、案外「お歌のおけいこ」だけしたりするわけ。その結果「コードのこと、他の楽器のことが全然わからない」ということが起こることがある。そういう歌い手が出てきた場合に、一緒にやるミュージシャンは「お膳立て」してあげるしか、しょうがなくなるわけ。気分が「お膳立て」になっちゃうのね。するとテンションが、そこまでインストルメンタルでやっていたのとは全然違う・・・。

で、そういう流れがなんとなく世の中にある中で、「歌バン」っていうのはこういうもんだ、っていうふうに思ちゃう人もでてきて・・・そうなるとなんだかむずかしい事になっちゃいますよね。「なるべくそうならないように、努力します」・・・と言うことなんです!

Go To Top

 

Q:歌は言葉で表現するので他の楽器と比べると、もともと持っている「存在感」というものがありますよね?

清水:
歌ってやっぱり、歌詞を扱うぶんだけ特殊だし、どうしても絶対的ソリストになっちゃう感じがしますよね。歌詞やメロディーを「どう語ってどう歌うか」ってことを、それぞれのやり方でやっていくわけだけれど、実際の演奏は「それを周りの音との関係でどうしようか」ということになる。

歌詞は歌い手だけのものかもしれないけれど、芝居のせりふのやりとりのように「間合い」だの「トーン」だのって、全体の流れの中にしか存在できないわけだから、良い存在感が醸し出せたとしたら、歌い手も偉いけど、他の演奏者たちがさらに偉い!!

私のことで言えば、ベーシックなピアノトリオというのは決まっているけれど「いつも安定した状態なのか?」ということではなくて、「好きにやってくれる」から良いのね。それぞれのミュージシャンをとても尊敬しているんだけれど、私のほうはある程度"信用"してもらえるようになるまで何年もかかった。そこまで「育ててもらった」と思っている。「こっちがこう行ったら、こいつはコケるだろうな?」なんていうことがずっとあっただろうと・・・

ある時期から、もうそういう心配をしないで、勝手に弾いてくれるようになって、「勝手にコケてなさい」ということなんだけど「あ、そうか、コケてもめげなくなるまで、待っていてくれたんだな」とすごく思ったのね。"皆が好きなようにはみだして、好きなように引っ込んだりできる関係"っていうのが、初めて作れたような気がするのね。

そこからアンサンブルっていうのが面白くなってきた。この経験で、今度は「他のミュージシャンともそういう関係を持つ力が出来てきたかな」という気がしたのね。歌い手が逆にそのミュージシャンのプレイを引き出してしまう、みたいなことが出来たらすごく面白いと思う。「お、こいつはちょっと違う!」って、そこまで思わせるように歌えたら、めちゃくちゃかっこいいと思うな。そうなってみたいです、ほんとに。

 

歌うことが「気持ちよくて楽しい」ように

Q:ヴォーカルを教えられていますが?歌を勉強するときの理論の重要性は?



清水:
基本的に仕事としてやるのか、趣味なのか、というところでスタンスを聞いてしまうんだけど、仕事としてやろうとしている場合には、まずコード楽器をひとつやりなさい、ピアノをやりなさい、と言うの。コードをテンポ通りに押させられるくらいは。それが出来るのと出来ないのとでは、あとの話の広がり方が全然違っちゃうから。楽しみでやる場合には好きだったら、という程度。

理論ではなくて「耳だけででなんとなくわかる」ということも、結構、大事だったりするんだけど、ただそのままの気分で歌手になっちゃうと。生理的に黙って聴いていれば解るようなことを弾いてもらわないと、解らなくなっちゃう・・・そこに繋がっちゃうの・・・ただし強力に「いい耳」は何にも勝る武器です!

あとは「声を出しているのが、気持ちよくて楽しい」というふうにもっていくわけ。歌うのが好きで勉強をはじめるわけだけど、勉強を始めると急につまんなくなっちゃったり、迷っちゃってわかんなくなっちゃったりする、っていうことが往々にしてあるのね。そこのところをうまく抜けられるように、なんとなく解っていきつつ、面白いことが持続するように・・・というように考えているのね。

その人の「一番ナチュラルで、楽しく、気持ちよく出る声」を確かめる、探す、開発して育てる、ということをしてあげたい。その声があったら、もうあなたが好きなように歌えばいいだけだから。だから「その声で気持ち良い?」という突付き方になっていくのね。

こっちから方法論だけ言ってもしかたがないんで、気持ちが良いか悪いか、ということを判断する気分、体と耳、が出来ると一番良い。それが自分でわからないと、いくら方法論を言っても意味が無いのね。体と耳で感じがことを直していって3ヵ月ほど経つと、少し話が違ってくるのね。少し楽に歌えたり、気分がいい感じに歌えるとか・・・。何が気持ちよくて、何が体にとってつらいか、というのを整理していくの。方法論、メカニカルな体の使い方はある程度出来てから説明するの。

声って一番よく響いている状態は、ほとんど体に負担がないのね。体から湧き出してくれている、感じ、そこの感じを、とにかく早く、一回でも味あわせちゃう・・・、ピカっとその声がでたりすると、「それっ、それがほしいの」って言って、、、「いずれはその感覚を自分のものにするんだよ」と。そんなことを繰り返すうちに、「体の鳴り」「喉の開きかた」「息と声の一致」をなんとなく体感してもらう。私の方法は時間がかかるんだけど、あんまり嫌にならせないようにやりたいと思って、いつ来られなくなっても「歌っていたのが面白い」という印象をもってほしいのね。レッスンに来て帰る時に楽しくなってもらいたい。「つらかった」っていう感じで返したくない。(笑)



Q:ご自身のトレーニング法は?

「健康でいること」「健康な感じでいる」こと。やっぱり気持ちよく息ができるような状態じゃないとよくないから。あとは体全体の筋肉を落とさないこと。いつでもぴょんぴょん動けるような気分と体。年をとってからも持っていられるような努力をしないと・・・これからの大きな課題になるんじゃないかな、と思っている。精神的にもしんなりしないで、フレッシュでいるために。体を維持しておいて、あとは声の柔軟性を失わないようにする。新しいものを覚えられるように、脳みそのトレーニングをする!(笑)



Q:英語の歌詞を歌われる時のご苦労はありますか?

清水:
なんでジャズに行ったかというと、もともと英語の歌詞の語感が好きで、古いスタンダードって韻をふんでいるでしょう?それがきれいな詩が多かったの。っだから日本語の歌よりも英語の語感で歌を歌う方が全然面白かった。そっちから入っちゃっているから。、子供の頃からフォークソングをやっていたんだけど、ピーターポール & マリー、ジョーン・バエズとか半分以上は英語。そのうちビートルズとかがブレイクして、小学校の後半くらいから日本語の歌を聴かなくなっていたかもしれない。だから英語の方があたりまえのようになっていた。

Go To Top

 

息遣い・・・自然に「その人の話し方」で

Q:歌う時の感情移入については?

清水:
実は「感情移入」という言葉は、私には全然ピンとこないの。歌詞は「歌うように話して、話すように歌う」っていうでしょ。「歌う」「しゃべる」ということの、自分の中での境目をなるべくなくすの。歌うっていうことが特別だという感じがなくなるのね、そうすると歌う時に一生懸命じゃなく自然に歌えるの。ただ、すごくやりにくいのよね、それが。歌おうと思っているから、どうしても歌っちゃうのよね。それが「よけいなお世話だ」っていうことに気がつくまでに、しばらく時間がかかる。

イントロがなり始めたときに「どう構えるか」というと、「その歌を歌う人」「歌詞を扱う人」になっておくことが大切で、別に「歌う人」になる必要なないと。これは役者の約作りとよく似ていて、「その状態」になっていれば、それでいい。

だから、「ある種、別人格」「日常の自分とは違う」ところにいる・・・それが出来て、初めて曲の色が出せると思う。何曲歌っても同じになっちゃう、というケースがあるじゃない。声のニュアンスがあまり変わらないとか。ニュアンスだけをつけようと思うと安っぽい当てぶりみたいな感じになってしまう。

だから、息遣いで・・・本当に嬉しい時と悲しい時、それを想像してみて・・・声の出どころとか息遣いが違うじゃない?感情とか情景を「言葉で表現する」のではなくて「その息使い」をする、話す。そうすると自然に「その人の話し方」「その人の歌」になる。ただ歌詞の世界っていうのはもう言いたい放題じゃない?(笑)でも実際に経験することなんてタカが知れているから、あとは想像力の問題・・・如何に自分のこととして話ができるか、歌えるか?そこが問題になるんだと思う。如何に自分の中でふくらませることが出来るか?だから、私が一番嬉しいのは「あの曲、いい曲ですね」っていわれることなの。

 



Q:音楽を通して伝えたいことは?

 

清水:
演奏する場に来てくれる人、CDを買ってくれる人、その人たちが音楽を聴いて、少しでも気分がよくなったり、元気が出たり、少し目尻のあたりがちょっと柔らかくなって帰っていける、眠りにつける、、、とか、そういう状態が作れたらいいな、ということなの。具体的なメッセージというのはないんだけど、良い気分がシェアできたら、それでいいんじゃないかなあ。

 

 


Q:プロをめざす方へアドバイスをいただけますか?

清水:
さっきも言ったけど、歌って絶対的ソリストでしょう?だけど「1人じゃ絶対にできないんだ」ということをちゃんと解ってほしい。「バンドと歌」になってしまわないで、全体のアンサンブルを大事にして歌う、耳が7割人のことにいっている状態。それがなくちゃダメだと思うので、バンドで歌う人は是非そういうことを考えてください。




Q:これからトライされたいことはありますか?

清水:
普段できないような楽器編成のものやビッグバンド、ロックバンド、ストリングス・・・いろいろな編成で歌ってみたいと、いろいろなフィールド・タイプのミュージシャンとの交流を広げてみたい。最小ユニットから最大ユニットまでのレンジを楽しんでみたいと思っています。

====================

真夏の猛暑の一日、お忙しい中をインタヴューに応じていただきました。ヴォーカルと同じように自然体で暖かいお人柄の、とても魅力的な女性でした。
(2001.7.22)

====================

Interview & Photos by A.Matsuzaka

Go To Top

Copyright (C) 2001 Global Artist Network. All rights reserved.