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Press Vol. 12 > Feature: Norway Jazz Week
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ライブレポート インタビュー
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ライブレポート インタビュー
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ライブレポート インタビュー
LIVE REPORT
Helge
Lien Trio
May 28, 2003 at JZ Brat, Shibuya, Tokyo
3人編成のジャズ・オーケストラにより、真に独創的でかつエキサイティングな解釈で繰り広げられる「テイク・ファイブ」。
現代室内楽とジャズとの融合の妙を聴かせるヘルゲ・リエン・トリオのユニークな音世界。
Official
Site: http://www.helgelientrio.com
ヘルゲ・リエン インタビュー
ノルウェイ・ジャズ・ウィークの第二弾はヘルゲ・リエン率いるヘルゲ・リエン・トリオの演奏である。全員がクラシックの素養を持つバンドだが、アルバム「スパイラル・サークル」(2002)、そして彼らのデビューアルバムである「What Are You Doing The Rest Of Your Life」でも聴けるように、その演奏は現代室内楽をジャズと融合させたような端正さとフリーフォームなインプロヴァイゼーションの楽しみを併せ持っている。
会場となったのは渋谷セルリアン・タワーにあるジャズ・バー、Jz Brat。小規模ながらゆったりとした店内にはステージをビデオ撮りしたスクリーンがバーカウンターの後ろに設置されており、これが店内中央の柱による死角を補っている。
ヘルゲがピアノに向かうと、意外なほど力強いコードで"Speak No Evil"が始まる。ベース、ドラムスともにさすがにうまく絡み合ってくる。ピアノトリオは"ピアノをメインに他2人がバックに回る"ことがよくあるが、このバンドは3人が組み合わさって演奏するバンドだということがわかる。
続く"Quite
a Small Circle"では静かなピアノのイントロに導かれてパーカッションがなにやらユーモラスな味をくわえてゆく。ベースはカウンターポイントを交えた対旋律を弾いている。一聴するとそれぞれが別の曲を演奏しているかのような印象を受けるが、次第にそれがトリオ編成のオーケストレーションとして絡み合ってくる様は見事だ。ドラムスのライドがリズムを刻み出すと清清しいグルーヴが生まれる。ベースのソロはフレット全体を動き回るダイナミックなものだ。
バンドの紹介に続いて、弦を手で押さえてミュートしたピアノがドラムスとのパーカッション・アンサンブルを聴かせる"Hypotek"。フリーフォームな感じが良い。ベースとピアノの低音部とがゆるやかなリズムを作り出すとドラムスが細かく輪郭を加えてゆく。
続くベースのモノローグとも言うべきソロでは音数を抑えながらも様々なテクニックを交えて聴かせる。左手で開放弦を弾いてリズムをとりながら弓でメロディーを弾いたり、あるいは弓を弦の上で弾ませてパーカッシヴに奏でるスピカートなど、さすがにクラシックの演奏家でもあればこその多彩な表現で楽しませる。曲はアヴァンギャルドな展開からゆっくりとしたECM系のアーティストを連想させる清涼感のあるリズムへと移行して行く。
クラシカルなフレーズと和声をもつピアノで始まる、アルバム・タイトル曲の"Spiral
Circle"。ここでもベースはカウンターポイント的なアプローチを見せる。ドラムスは控えめにパーカッションを加えている。静謐な音世界が広がるなか、ベースのメロディーがピアノと交差する。ここでのトリオの演奏はピアノとベースのデュエットにドラムスが加わったような印象を与える。ピアノのタッチが絶妙で静かな演奏ながらダイナミズムを感じさせるに足るものである。
続く"Beneath
it All"はヒンデミットを思わせる現代ピアノ曲から山下洋輔ばりのアグレッシブな演奏へと展開して行くが、これは「直感的に曲を作ってゆく」と言うヘルゲの真骨頂というべきだろうか。そのフリーフォームなピアノの上にベースとドラムスが曲の形を浮き上がらせる様はなかなかスリリングである。中間部ではミディアム・テンポの都会的ジャズへと展開してゆくが、スムーズな流れのなかで、冒頭のアヴァンギャルドな感じをやや残しながらスタンダードなジャズへもってゆくのは見事である。曲はドラムソロをフィーチャーし、再びフリーフォームになって激しさを増してゆいく。ヘルゲがミネラルウォーターのボトルで弦にミュートを加えながらピアノの弦を直接指で弾けば、ドラムスのクヌートはシンバルを床に投げるパフォーマンスまで披露してくれた。ライブ終了後にヘルゲに聞いたところによると、彼がそうしたパフォーマンスを見せるのは本当に乗っているときだけなのだそうだ。また、クヌート本人に「バード(フォレスト・ウィテカー主演のチャーリー・パーカーの映画)みたいだったね」ともちかけてみたところ「ああ、そうそう、そう言う場面があったね、でもあれはあんまり楽しい場面ではなかったけどね」と、即座に答えが返ってきた。ジャズのメディアもよく研究していることをうかがわせる。
床に落ちるシンバルをの音をきっかけに、トリガーとしてピアノが"Take Five"のリフを奏で始める。デイブ・ブルーベックが'96年11月に"Time Out"の再発盤ライナーノーツに書いたところによると、作曲者のポール・デズモンドはこの曲について、「これはヒットを狙った曲ではなかった。ジョー・モレロのドラム・ソロとして作ったんだ」と語っているそうである。とすれば、今夏のヘルゲ・リエン・トリオの演奏はまさしくその精神を継ぐものといえる。すなわち、手で叩くドラムスが激しさを増して行く中、ピアノとベースはひたすらリズムを惹きたてるように伴奏しているのである。そしてそうした効果はクヌートがスティックを取ったときに曲が見事にスイングしていることで明らかとなる。スライディングやタッピングを多用した軽妙なベースソロも素晴らしい。左手でリズムとベースラインをとりながら弓でアクセントをつけて行く。また右手のタッチが絶妙である。そしてベースが高音部を速い連符で弾く中、ピアノがベースラインに回ってリズムを固める。そして全員が入ってテーマに戻って行くのだが、「テイク・ファイブ」の演奏としてこれほど独創的でかつエキサイティングなものは他に類を見ない。
アンコールに応えてバンドが戻ってくる。ピアノが奏でる美しいメロディーが印象的なバラードである。艶やかなベースの音が心地よい。抑えながらも効果的に入ってくるドラムスを聴いていると、このバンドでのドラムスは、むしろパーカッションとしての役割を取っているように思える。北欧らしい洒脱さを湛えた演奏で、最後には行きを呑むほどの美しさをもって曲のエンディングを迎える。
アメリカとは地理的にも文化的にも離れたところで発展してきた北欧ジャズは時に室内楽的な色彩を見せるが、このバンドに至っては室内楽をジャズに発展させたといってもよいほどの柔軟なミクスチャー感覚を感じさせて止まない。「テイク・ファイブはああいう風に演奏するものだよね」と声をかけると目を輝かせて「イエス!」と応えたヘルゲ・リエンの独創的音楽表現にかける熱意を充分に感じさせるライブであった。
ノルウェー・サーモンによる当日のスペシャルメニュー
Members:
Helge
Lien(Piano)
Frode Berg(Bass)
Knut Aalefjaer(Drums)
<Set
List>
1. Speak No Evil (Wayne Shorter)
2.
Quite a Small Circle (Lien)
3. Hypotek (Lien)
4. Spiral Circle (Lien)
5.
Beneath it All(Gary Anderson)
6. Take Five (Paul Desmond)
7. Quiet Now (Denny
Zeitlin)
ヘルゲ・リエン インタビュー
Q:
すでに2日間演奏されているわけですが、日本の印象はどうですか?
HL: 日本で演奏できることを素晴らしいと思っています。まず聴衆が素晴らしい。日本の聴衆は良く音楽を聞いてくれますし、私たちの発するエネルギーをとてもよく受け止めてくれていると思います。そして食べ物が美味しいし、人々は親切で、本当に楽しく過ごしています。
Q: アルバム「スパイラル・サークル」について伺います。このアルバムを聴いて、特に印象的だったのは、ピアノの音の美しさです。
H: どうもありがとう。
Q: ピアノを演奏するときにはどのような心構えで演奏するのですか?
HL:「今この瞬間、ここに居る」という私自身の存在に集中するようにしています。また物語を作るということも意識しています。それぞれの曲がひとつのものとして、起承転結を持って完結するように心がけています。
Q:
アルバムで演奏したピアノのメーカーは何ですか?
HL:スタインウェイです。オスロにあるレインボー・スタジオの有名なピアノですが、このスタジオはECMレーベルの作品が多く録音されたところです。このピアノは本当に素晴らしい。そして優秀な調律師がいることも重要な点です。
Q: あなたはピアノの素晴らしさをとてもよく引き出していますね。
HL: ありがとう。そう言ってもらえてとても嬉しいです。またテクニックとしても手で弦をミュートしたり、さまざまな奏法を使って多様な音色を出しています。
Q: 演奏しながら弦を押さえるのですか?
HL: そう、そうやって弾くんです。
Q: 今日のライブでも、その奏法を聴くことが出来ますか?
HL: もちろんです。
Q: このアルバムには多くの斬新なアレンジがほどこされていますが、アルバムのコンセプトは何ですか?
HL: アルバムのコンセプト自体は私の作曲の中にあるのですが、私は作曲する時、そこに突然湧いて来るものを書きとめ、そしてバンドと一緒にリハーサルする、というスタイルをとっています。つまり"直感的作曲"です。また、バンドで曲を演奏する時には、その時々で、違うバージョンにすることが多くあります。始めは全くオープンな状態にしておいて、演奏するうちに違った方向へ進んで行く、ということになるのです。だからこのアルバムは"その時々の即興"によって作られたものだと言えますね。
Q: 他のメンバーについて教えてください。
HL: クヌートは非常に独創的なドラマーです。ドラムセットでドラムとパーカッション、両方の音を出すのです。彼はクラシックの教育を受けていて、クラシックやドラムのための現代曲なども多く演奏しています。そういう経験から、彼の演奏にはとても多様なアイデアが反映されています。ベースのフローデもやはりクラシックの教育を受けています。技術的に優れていて創造性豊かな演奏をする人です。また、ボウイングが得意です。ふたりとも非常にクリエイティヴなミュージシャンで、アルバムを完成させるために大変貢献してくれました。このトリオのコンセプトは、トリオがひとつになって演奏するということにあります。1人をほかの2人がバックアップする、という形ではありません。演奏中はそれぞれの役割が交替していきます。
Q:
今日の演奏が楽しみですね。
HL: 今日はすでにファーストセットを演奏しましたが、セカンドセットではアルバムに収録されている曲のほかに、次のアルバムに収録する予定の曲も演奏します。全く新しい曲が聴けますよ。次のアルバムは来週からレコーディング開始予定で、ディスク・ユニオンのDIWレーベルからリリースされることになっています。
Q: 今日使うピアノはどこのメーカーですか?
HL: カワイです。なかなかよいピアノですね、ソフトでレスポンスも良いし、気に入っています。この会場も良いですね、ユニークな感じで、ここで演奏できることを嬉しく思っています。
Q: がんばってください。
HL: ありがとう!
Report
by Tatsuro Ueda
Interview by Asako Matsuzaka
Photography by Asako Matsuzaka(Performance),
Yoko Ueda(Interview)
Translation by Tatsuro Ueda
Edit by Asako Matsuzaka
Many
thanks to Royal
Norwegian Embassy, Cosmo
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Brat
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