<Home> <Info. from Artists>


Artist Press Vol. 12 > Feature: Norway Jazz Week

Beady Belle
: ライブレポート インタビュー
Helge Lien: ライブレポート インタビュー
Bodil Niska
: ライブレポート インタビュー


LIVE REPORT


Bodil Niska
May 29, 2003 at JZ Brat, Shibuya, Tokyo


「オールド・ジャズを守り伝えて行きたい」と語るボディル・ニスカの流麗なサックスの粋な味わい





Official Site: http://www.barejazz.no/niska/

ボディル・ニスカ インタビュー

ノルウェイ・ジャズ・ウィークの終盤となる演奏はノルウェイの人気女性サクソフォニストであるボディル・ニスカのカルテットである。会場は今回も渋谷Jz Bratだが、セカンドショーということもあって、一日の終わりをオールドタイム・ジャズで締めくくろうというリラックスしたムードの会場である。

やおら現れた4人。古き良き時代のジャズが好きというボディルの好みが良く現れたオールド・タイムな演奏で聴かせる"Jean"。ボディルのテナーはベテランの風格を漂わせる。

アップテンポなスウィングの"How about You"。ステディにリズムを刻むベースとドラムスに乗って明るい音色で楽しげに吹くテナー。ピアノソロもストレートながら豊かなフレージングで愉しませてくれる。ベースソロは軽快に響き、リズムを崩さないクラシック・ジャズの王道を行くものといえる。ドラムソロはブラシに持ち替えてなかなかにツボを心得たもの。

一転してスローなワルツの"Sometime Ago"。ソフトな語り口で聴かせるボディルのテナーが心地よい。ペルの弾くピアノもベテランらしい艶やかさを持ったもので、ベースソロの終わりにユニゾンで入ってくるところなど、実に心憎いまでの決まりようである。

この日誕生日を迎えた2人のお客さんへ「ハッピー・バースデー」がプレゼントされた。ボディルの暖かい人柄がうかがえる一コマであった。

アップテンポに奏でる"I hear a Rhapsody"。饒舌ではないが話が上手い、といった感じのテナーに続いて、これは雄弁なピアノのソロ。ちなみにこのピアニスト、ペル・フスビーはジョン・サーマンやクリス・ポッターなど、著名なジャズ・ミュージシャンを配したジャズ・オーケストラ・アルバムをリリースしている人で、ちょっとした演奏にもアレンジャーとしての手腕が際立つ。また、低音部を巧みに使ったベースソロに続いてドラムスはここが見せ場とばかりに、エルボウ(肘)でスネアの音程を変えるなどテクニックを繰り出す。バンドとしての力量がよく現された一曲である。



 


今度はスローバラード。アルバムのタイトル・ナンバーである"First Song"。良く通るテナーの音色はあまりメロウになりすぎず、また演奏全体としてムードに流されないのはメンバー個々のフレージングの良さゆえだろう。

続く"September in the Rain"はスタン・ゲッツを思わせる出だしで始まる。テナーのなかなか色気のある節回しが続き、徐々にアンサンブルが熱を帯びてくると見事なスウィングとなって会場を沸かせる。ベースとドラムスのインタープレイも実に良い味を出していた。

ブレスを多めに吹くテナーに導かれて始まるスローバラードの"Polkadots and Monbeams"。思い出話に興じるような饒舌なテナー。ここでも気の利いたフレーズがピアノやベースから繰り出されてくるところがただのメロウな曲に終わらせていない要因といえる。

アンコールは"Vuggevise for Benedicte"。短い演奏だが微妙に絡み合うリズムが聴き物で、ライブの最後をしっとりとまとめてくれた。

地元オスローで一番大きいというジャズ・レコード店を経営するボディルの、ジャズへの愛着がにじみでる演奏だったが、それをサポートする三人の力量も大きなポイントといえる。進歩的なジャズが多く評価されるなかで、オールドタイムなものを守ってゆかなければ、という彼女の個人的思いがなせる親近感にあふれ、また奇をてらわない楽しさに満ちたショーであった。

ノルウェー・サーモンによる当日のスペシャルメニュー


Members:
Bodil Niska(Tenor Sax)
Per Husby( Piano)
Stig Hvalrygg(Bass)
Masahiro Taji(Drums)

<Set List>
1. Jean
2. How About You
3. Sometime Ago
4. Happy Birthday (for birthday audience)
5. I hear a Rhapsody
6. First Song
7. September in the Rain
8. Polkadots and Monbeams
9. Vuggevise for Benedicte


ボディル・ニスカ インタビュー


Q: 日本の感想はどうですか?

BN:とても大きいですね。私はノルウェーの北部の小さい町から来ました。私はオスロに住んでいるのですが、オスロも東京ほど大きくありません。まだよく街を知らないということもあって、街中に出かけるとホテルまで帰れなくなってしまいそうで怖いですね。ある時、現代建築の中に昔の家が建っているのを見たのですが、これはとても面白いと思いました。もしできれば、コンサートの後一週間くらい、ゆっくり街を見て歩きたいですね。

Q: 今日が最後のコンサートですが、日本でのコンサートはどうでしたか?

BN: 長旅のあと、直ぐステージに立ったので、私たちは疲れていたんですが、聴いてくれた皆は、とても気に入ってくれました。今回は2回目のライブですが、会場が素晴らしいし、、オーディエンスがとても静かで、ミュージシャンの音にとても敬意をはらってくれていることをとても嬉しく思います。

Q: オーディエンスが静かなほうが演奏しやすいですか?

BN: そうですね。静かな方がサックスで表現すること、あるいは物語を語るのに良いですね、ひとつひとつの音が大切なものですから。たとえばスピーチをするときに、誰かがおしゃべりをしていたら、あまり良い感じはしませんよね。それと同じです。だからこうして聴衆が静かでリラックスしていてくれて、曲を気に入ってくれているというのは、もう完璧です。

Q: ボディルさんはサックスを吹くときには、物語を語るようにと心がけていらっしゃるのですか?


BN: そのとおり、サックスで語ります。私は曲で、一音一音で、物語を語っています。

Q: 「First Song」では、多くのスタンダードナンバーを、とても自然に演奏されているように感じましたが?

BN: スタンダードは私にはにはとても大切なものです。古い曲はメロディーがきれいですからね。若い人たちは新しい曲を演奏しますから、私はスタンダードを守っていきたいと思っています。

Q: 聴いていると、とてもリラックスします。

BN: どうもありがとう。一日中忙しくしていると、演奏するときにはもう一人の自分が現れて、もっと自分自身の中に入っていけるんです。私はそれほどテクニカルなプレイヤーではありませんが、ストーリーを語ることはうまく出来ると思います。

Q: あなたのサックスはとても優しくて、スムースですね。テナー・サックス・プレイヤーはテクニックを重視する人が多いように思うのですが、あなたのように吹く人は余りいないように思います。

BN: それならベン・ウェブスターやジーン・アモンズを聴いてみるといいですよ。

Q: 日本人には比較的テクニカルな奏者が多いのですが。

BN: おそらく多くの人がテクニックよりメロディーを大切にした演奏を好んでいて、それで私にもコンサートの誘いがあるのだと思います。私のプレイスタイルはとても伝統的なんです。

今日のコンサートがとても楽しみです。

どうもありがとう。どうぞリラックスしてください。


Q: あなたはノルウェーでレコードショップを経営されていると聞いたのですが?

BN: 私の店は「Bare Jazz」といって、ノルウェーで一番大きなジャズ専門店なのです。二階にはカフェがあって、そしてステージとピアノやドラムス、PAシステムも備え付けてあるんです。ミュージシャンやジャズの好きな人が来てピアノを弾きたいと思ったら自由にそうしてもらうし、昼間からジャムセッションだってできるんです。

Q: すごく楽しそうですね。

BN:1998年からはじめたのですが、とても良い店ですよ。

Q: そこでよく演奏もされるんですか?

いいえ。やっぱり私が店のオーナーだし、音楽やカフェやすべて私がやっているところで自分もプレイするというのは、あまりに自分が前に出すぎるようでよくないと思っています。他の人に演奏してもらいたいと思っています。ノルウェーで新譜がでると、そこで発売記念ライヴをよくやります。

Q: アルバムでは、あなたのお父さんがアコーディオンを演奏されていますね。

BN: それを私はとても誇りに思っています。私が小さかった頃から、父は演奏していて、私にスタンダード音楽を教えてくれました。彼は今、78歳ですが、レコーディングの時は75歳でした。私は父にスタジオに来てもらって、一緒にとても良いセッションをしたんです。これは本当に貴重な経験でした。そしてこれは私のルーツなんです。

Q: 親子で共演されるのは素晴らしいことですね。

BN: 彼は一度もスタジオに入ったことがなかったので、そういう機会を作ってあげたかったんです。


Q: お父さんはプロではなかったのですか?

BN: そうなんです。趣味で弾いているだけなんです。

Q: プロフェッショナルのような演奏でした。

BN: 彼は本当に良いプレイヤーなんですが、普段は別の仕事を持っています。ちょうど私と同じですね。私もお店を持っていて、そしてプレイもしていますから。

Q: 今日はインタヴューの時間をとっていただいて、本当にありがとうございました。

BN: こちらこそ、ありがとうございます。とても良い時間をすごせました。

Report by Tatsuro Ueda
Interview by Asako Matsuzaka
Photography by Asako Matsuzaka
Translation by Tatsuro Ueda
Edit by Asako Matsuzaka
Many thanks to
Royal Norwegian Embassy, Cosmo Public Relations,
JZ Brat

Copyright (C) 2003 Global Artist Network. All rights reserved.