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カルロス菅野インタビュー:
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熱帯JAZZ楽団
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(+Q&A, Schedule):
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パワフルで熱いステージ、最高のテクニック、「音楽はエンターテインメントだ」そのままに、私たちを楽しませ、惹きつけてやまない熱帯ジャズ楽団。結成7年目を迎えて、ますます快調に飛ばす“熱帯”率いるカルロス菅野さんのインタビューレポートです。
エンターテインメントのKEY・・・それは余裕をもって演奏したところに出てくる"魅力"
Q:
熱帯ジャズ楽団のコンセプトはエンターテインメントとおっしゃっていますが、カルロス菅野さんのお考えになるエンターテインメントとはどのようなものでしょうか?
カルロス 菅野:
僕は「音楽はエンターテインメントだ」と事あるごとに言って、それをコンセプトの真中に据えているんですが、その時、これは極解かもしれませんが、ミュージシャン、特にジャズやフュージョンのミュージシャンというのは、とてもアーティスティックというかストイックな方向にどんどん進んでいって、エンターテインメントとか、そういう言葉に対してすごく、センシティブというか神経質なところがあるじゃないですか。「そういうものじゃないんだ」というような発想というのが?
もちろんエンターテインメント性を持っている人たちもたくさんいます。だけどそれがメインになってはいけない、という空気というのはどことなく、やっぱりあるわけなんですよね。もっと切磋琢磨した技術だとか、音楽的なベースだとか、インプロビゼイションの能力とか、そういうことに評価がいかなければいけない世界なんだと。「なんかそういう空気があんのかなあ」というのを感じていて、それがまた、やる側よりもファンと言うかオーディエンスの側にそういう価値観があったりしてね。そういうのを強く感じていたんですよね。
僕にとっては、たとえばマイルス・デイビスがね、すごく恐い顔をして、一つの音をプーっと吹くだけのソロをするのもエンターテインメントに見えるんですよ。ウェイン・ショーターが、もう微動だもせずに、すごく深々としたサックスを吹いている姿っていうのもやっぱりエンターテインメントなんですよね。
エンターテインメントっていうのは、あくまでも「"人を惹きつける魅力"をどう見せるか」っていうことじゃないですか。だから、僕らが例えば"ミッション・イン・ポッシブル"をやるから、"セプテンバー"をやるからエンターテインメントだ、ということじゃないんですよね。これだけの技術を持った人間がいて、余裕をもって演奏したところに出てくる、その"魅力"っていうものがあるじゃないですか。それを感じとってほしい。そこがエンターテインメントのKEYだと思うんですよね。何か面白い演出をする、それはそれで大切なことなんだけど、やっぱりそれが受け入れられるだけの「その日の空気」っていうのを作らないと、ああいうこと自体がもう、ちょっと逸脱した世界になりがちなところがあるじゃないですか。ただウケを狙っている、みたいなことに転びかねないものだと思うんですよね。
僕は「みんな自由にやってくれ」と思っているんです。メンバー全員の持っているポテンシャルが、もうそれ以上、そんなものを乗り越えたところにあって、凄いものを出せる人間が集まっているんだと。それさえあれば、後はお客さんとコミュニケートする方法を、どうとろうが、音楽的クオリティはそれでOKでしょ。それを理解してもらうためにいろんなことが起きてもいいじゃない、という発想なんです。ただ時としてウケる曲をやること、ウケるネタをやることに目が行きがちだなっちゃうけど、実はそれができるのは、それ以上に凄い力があるから、それをやってもカッコ悪くなんないんですよね。もしそのポテンシャルとか、力量がない人たちがやっちゃったら、もうただ面白いだけで終わっちゃう。そこのバランスが、このバンドでは素っ晴らしくとれている。そこがお客さんが楽しめる要素なんです。
一番重要なのはオーディエンスとの関係・・・
Q:
熱帯ジャズ楽団のLIVEでとても印象的だったのは会場全体の雰囲気がとても心地よかったことです。メンバーの方が楽しんで演奏していらっしゃるのがオーディエンスにそのまま伝わって、オーディエンスも演奏に自然に反応する、というような、ミュージシャンとオーディエンスのコミュニケーションがとてもバランスよくとれていますね。
カルロス菅野:
僕はオーディエンスに熱帯ジャズ楽団をを家でバンとかけて、家でお掃除をしてほしい、日常の生活をそこでおくってほしいわけです。車に乗る時、友達と盛り上がる時・・・日常の生活の中で音楽を楽しんでもらう、ということを考えた時の、オーディエンスにアピールするための「ひとつのドア」なんですよね。たとえばヒット曲をやったりする、っていうのは。まずこのドアには表札があって、こういう家なんですよ、お店がまえの表側なんですよ、これだったら入りやすいでしょう、ていう。「あっ、この店よさそう、ちょっと入ってみようかな」、そうしたらすごく美味しいものがでてきたりするわけじゃないですか。その表がまえのところを、そういうヒット曲に担ってもらって、でも実はオリジナルなんか結構ハードな曲や難しい曲もあるし、演奏もとてつもなく凄いことやるんだけど、でも「楽しかったね、美味しかったね」って言って帰ってもらえる。そこがメインだと思っているんです。
やっぱりオーディエンスとの関係というのが一番重要です。この間のスイートベイジルでも始まる前はすごいプレッシャーというか、こう気分が悪くなるような感じがあるんですよね。あがるとか、そういう問題ではなくて。その緊張感はすごくて、一週間くらい前から、ちょっとおかしくなってたりするんだよね。自分が何かを、自分のプロダクションとしてオーディエンスにぶつけるっていうときに、なによりもプレッシャーというか、緊張感が高まる。またそれがいいんですけれどね。
始まる前、僕以外のメンバー16人の意志が僕のところにギューンと集まってくるんですよ。全員のエネルギーが。そして、ぐーっと集まってきたものがお客さんのところにどーんと出て行って、今度は向こうからこっちにギューっと帰ってくる。その間にいると、ものすごく良い疲れがあって、自分にものすごい量のエネルギーがぶつけられている感じがすごくあるんです。あとはアミューズメントパークみたいなもので、エントランス入ったところからすべてが考えられていて、その日一日、ジェットコースターに乗れたと思ったら、メリーゴーランドもあったりね、そういういろんなことがあって、最後出口に出てくる、みたいな。
今はインターネットとかでいろんな評価がストレートに返ってくる時代じゃないですか。そうするとやっぱり、こっちもそれじゃあ、リピーターの人には常に新たなサプライズいうものを用意しないといけないし、初めて入ってくる人には、すごく良いドアを作っておかなければいけないし・・・。その両方のバランスっていうのは、常に常に、新しいもの、新しいものにしていって、そこの場を作る。本当にステキなレストランを作るとか、そういうこととよく似ているんですよね。音楽を楽しむ場を作る、ということは。
海外ツアーで得たもの〜熱帯ジャズ楽団結成への動機
Q:
海外ツアーをされる中で感じられたこと、また外から日本を見られて思われることはありますか?
カルロス菅野:
海外ツアーで世界中飛び歩いてLIVEをやって、そしてオーディエンスとしてジャズクラブに行ったりするなかで、やっぱり、もう全てのオーディエンス、どこへいっても、反応がニュートラルなんですよね。特にNYなんか。もちろん厳しく評価する人もいますよ。でも本当に日常的にジャズクラブに行って、部屋やタクシーの中でジャズやラテン、インド音楽なんかも流れていたりね。いろいろなものがあるんだけど、それに対して「自分がこう感じる」というのを、知っていようがいまいが、こう素直に表現するんですよね。「好きだ、嫌いだ」「いいと思う」「これはつまんない」とかね。もうハッキリ表現するじゃないですか。たとえばLIVEでも「つまらない」と思うと「それは必要ない」「おもしろくない」ということをハッキリブーイングするし、とたんに帰ってしまうんですよね。で、そのことが音楽を育てているんだと思うんです。
その覚悟があれば、聴くほうもやるほうも・・・「つまんなければ帰る」っていう状況になったら、やる側もすごくテンションがあがるし、毎回良いものを提示していかないと、そこで終わってしまうわけですよね。なにかアトラクティブなもの、エンターテインメントっていうことと同時にアトラクティブっていうこと、人を惹きつける魅力のあることをやらなければ帰る、という状況を作り合わないと・・・。だから「いいソロがあったら拍手をする」というポジティブな表現も大事だし、「つまんなかったら帰る」ということも起きないとバランスがとれないわけですよ。ところが日本のミュージックシーンっていうのは、常に予定調和的で一回入ったら終わるまで帰らないわけですよ、みんな。NYなんかクラブの値段も安いじゃないですか、1000円くらいで素晴らしいミュージシャンの演奏が聴けるじゃないですか、でも、その「とてつもないミュージシャン」でも、今日はこの人調子悪いな、と思ったら、みんな1000円しか払ってないから帰っちゃうんですよ。「また来月来りゃ、もっといいかもね」って言って。
僕はオーディエンスに対しては「積極的な評価をください」「つまんなかったら、つまんない顔をしてくれてかまわないです」と、「面白かったら面白い顔をしてください。素直に、素直に音楽を楽しみましょうよ、一緒に」って思っているんです。
僕がラッキーだったのは、ジャズ・フュージョンの世界もかじっていて、いろいろなミュージシャンと数多く一緒に演奏していたわけですが、一方でラテンというものもあった。すごく大衆的なものなんですよね。その大衆的なものでアメリカで成功して・・・アメリカや中南米、ものすごくパブリックなところで、大衆の前で演奏し続けたんですよね。そこで大衆が何に対してどう反応するのか、ということを掴ませてくれたんです。
NY、ベネズエラ、ペルーへ行っても大衆が敏感に反応するポイントは全部同じだったんですよね、「あっ同じだ・・・」。日本で言えばほとんど演歌のような世界なんですよ、ラテン民族にとってのサルサっていうのは、だからごく日常的な音楽のなかに入ったわけですよね、そこでの経験というのは、やっぱりとても大きかったし、そしてベースがやはりNYだったということ。NYではすごく大衆的なものと、ジャズやフュージョンとか、インストゥルメンタルの世界っていうのが近しいわけですよね。そこでの実力が問われた部分があって、そして生き残れたということ、本当のストレート・アヘッドのジャズとかフュージョンとは違いますけど、「NYでもらったもの」はものすごく大きかったんです。
日本で「デ・ラ・ルスの後、何をしようか?」って考えたときに、これだけのすごいミュージシャンがいっぱいいるんだから、もう少し楽しいことをやって、そういう考え方でやったら、きっとなんか、もっとハプニングする、できるはずだと。これを向こうに持って行って、こんだけのことを出来る人間がこんなにいるんだよ、っていうことを知ってほしかったんですね。それが第一の動機っていうかね。
アレンジメント・・・難しいものはシンプルに、シンプルなものはちょっと複雑な方向に
Q:
アレンジについてうかがいます。LIVEやアルバムのアレンジメントはかなり細かなところまで考えられて、練られているのですか?
カルロス 菅野:
それはすごく悩みますよ。アルバムの曲順にしてもライヴの曲順にしても、そのアレンジのあり方には。ただ残念ながら僕にはそれだけの才能がないんで、自分であれだけのアレンジメントを書いたりすることはできないんですよ。だから、メンバーの中にいる素晴らしいアレジャーたちと、選曲やその仕上がりのイメージについて、いろんな打ち合わせをして、それがこのアルバムの中にどのようにはまるのか、とか、ライブの中でこの曲のある位置はどういうものなのか、ということを吟味して吟味して、選ぶんですよね。そこに到達するまでの間、たとえばアルバムの曲のセレクションをしている間っていうのは、おなかの中にいろんなものがたまっていて、どうしよう、どうしよう・・・・みたいなのが3〜4ヵ月、ずーっと続いちゃうんです。ハッキリしたものがでないと、コンセプトどうしよう、とかね。ただ美味しそうなものがパラパラ並んでいるだけ、に聴こえるかも知れないんですけど、一応そういう、いろんないろんな苦しみがある中で作っているんですよね。
お料理に似てると思うんですよ。素材を何にして、どう料理をして、どういう順番で、どういうふうに出すかと、で、口直しは何で、次に何が出てデザートはどうなるのか、と・・・。特に素材が良くなければ、絶対に美味しいものはできないし、素材が良くないのにごまかして味付けすることはしたくないんですよね。
Q:
ラテンの名曲を演奏されるとき、特にアレンジで工夫される点はありますか?
カルロス菅野:
例えば"Caravan"を例にあげると、あの曲の存在というのは、こういうバンドにとってはすごく定番的なもので、アルバムの中で要求される部分があるんですよね。そこを受け持つ曲なんです。ただアレンジの時に、定番としてつかわれている、定番のアレンジがあるんですよ。かならず6/8拍子だし。あの曲のオーソドックスな聴こえ方があるんですが、「じゃあ、そうしないでください」「そこは絶対にそうならないようにしてください」とか。"Sing,
Sing, Sing"の時はアレンジャーの方から、僕の思っていたのとは違うアイデアを持ってきて、しばらく悩んだんだけど、「それでいけるかも知れないですね」って答えがでる、みたいな。今回の"Eleven"でも、いろいろとぶつかってやり直したり、そういう紆余曲折があるんですけど、一番大事なのは「ストレートでわかりやすい」ということ。ギミックとか難解なことは極力やらない。
Q:
どの曲も無駄なものがない、と感じました。無理なアレンジがないというか、気分のよいノリで、聴いていてとても自然ですね。
カルロス菅野:
そこに演奏している側にも余裕が生まれるんですよね。そうすると、別なことにエネルギーが割けるようになるので、パフォーマンス自体の質も上がっていく。たとえば、何拍子かわからないような変拍子がたくさん入っているようなアレンジは、僕が今、持っているプロジェクトの中ではやりたくないんです。もし変拍子が入っていたとしても、それはバート・バカラックのようにとてもナチュラルな、変拍子が入っているのがわからない5/4が一回入っているとかね。これは好き嫌いの問題ですが、僕の中ではストレートなものが好きだから、そういうものをやりたい、と。ただ、これは音楽的価値とはまた別のところの話ですし、僕自身、実は難解な音楽も大好きで、演奏するのはいつでもOKなんですが。
Q:
アルバムに「ロックス」を選ばれたのはぜですか?とてもインパクトがありましたが。
カルロス菅野:
そこらへんはちょっと、意地というか(笑)、イレブンにしても同じなんですけれど、ストレートでダンサブルなのはいいんですが、「このへんはもうバリバリですよ」っていうような、そういうものもアルバムの中にほしいわけなんですよ、常にね。だから必ずああいうテクニカルなものも持ってくるようにしています。やっぱりそういうテイストのものも。ただそれをどう、アンダースタンダブルで受け入れやすいものにしていくか、それがキーなんですよ。
難しいものはシンプルにアレンジすると、逆にシンプルで、定番としてあるものは、定番の裏をかえして違うリズムをくっつけるとか、ちょっと他の人ができないようなリズムにスクイ−ズしてみるとか、いろいろこう、逆な発想というか、難しいことを難しくやるのは簡単なんで、難しいことをやさしく聴かせたいわけなんです。
そこに全体が集約されていくると、ひとつのコンセプトがちゃんと通ったようなアルバムになるということだと思うんです。
僕はアレンジャーではないんだけれど、アレンジをするもとの発想とをしっかり組み立てることが大事だと思うんです。「そこのところだけは僕の感性で押し切っちゃいますよ」とメンバーに言っているんですよ。「ごめんなさい、そこんところ僕の思いで、このバンドを動かさせてくれる?」と、で、みんな納得してくれているから、「OK、OK、いいよ」って。
やっぱり曲の素材とか、そういうものに流されていくじゃないですか、アレンジ自体が。難解な曲はどんどん難解な方向に流れていったりね。それを「自分はこの曲をこう料理したいんだ」という明確なものがあれば、いらないものを逆にとってとっていけちゃうんですよね。
常に裏々というか、どこにまとまっていくか、ということを全体の根として考えていますから、それを個々のキャラクターをもったアレンジャーに、すごくややこしいことをシンプルなアレンジをする人に、逆にみんなばよく知っている曲をちょっと複雑な方向に行く人にまかせてり、みたいな、そういうシャッフルをするんですよね。
そういう全体のことを考えているときはオーディエンスのひとりになっちゃうんですよ。どういうふうに聴きたいかな?こうやったらきっとすごく盛り上がるな。とか。オーディエンスの中に身を置いて聴き手になっちゃうんですよ、 だから僕がやっているのは、おおもとのコンセプトメイクだけなんです。僕の存在価値はそれだけしかないんで、そこだけはがんばります、みたいな。(笑)
イメージ以上にきています・・・
Q:
熱帯ジャズ楽団を結成されたときにイメージされた通りにきていらっしゃるんですね。
カルロス菅野:
きていますね。イメージ以上にきています。やっぱりこういうバンドだし、みんな忙しい一線級のメンバーばかりなので、ここまでコンスタントに活動できるようにはならないだろうな、という想定があったんですよね。とにかくチャンスがあれば年に2回でも3回でも、やりつづけて、作品が残せるのればいいなあ、と思っていたんですけど、どんどんチャンスが増えていくし、メンバーの方もこのバンドに対して「ある程度プライオリティをもっていこうよ」という雰囲気でいてくれています。いろいろなバランスを考えながらお互いにギブ&テイクでうまいところに収まっているます。
ただ基本的には出入り自由でこれからもメンバーチェンジはあると思んですが、次の世代いうか、新しい人が入ってくることが、また新しいエネルギーになっていくと。これからも変遷していくとおもうけど。
Q:
いろいろな意味で、発展性というか可能性がものすごくあるバンドですね。
カルロス菅野:
最初はどんな可能性、発展性があり得るのかわからなかったんですけれどね。こんなに大所帯でやっていたら行き詰まっちゃう。やっぱり「ビッグバンドの行き詰まり」ということが、ずっとあったじゃないですか。
音楽シーンの中にがあって、ビッグバンドというのは、アンサンブルとしてトップに位置するくらいのものだと思っていたんですよね、僕は。そういうバンドがどんどん無くなっっていく中で、セッション色が強くてもいいから、なんかこういう「場」が確保できていれば、「まあアピールするだろうな」と思っていたんですが、それがどんどん熟成されていって、いろんな意味で注目されるに値するだけのことができているのは、うれしいですよね。
今、次のアルバムの準備に入っているんですが、こういう受け皿だから、基本自体はかわらないけれど、いろんなシフトができるんです。将来的にはLIVEではラテンでも、アルバムではもっと自由な表現、ということも考えられます。たとえば「このアルバムはラテンじゃなくしちゃおう」とかも。極端に言えばね。アビリティーとしてはありますね。
Q:
次のアルバムについては?
カルロス菅野:
今は「こうご期待!」とだけいっておきます!
今はアーティスト自体の言わんとすること、力にも目が向いてきている・・・
Q:日本の音楽シーンについて、結成当時と今で変化はありますか?
カルロス菅野:
環境自体は、当時は、日本の音楽シーンはすごくメカニカルなバーチャルシーンだったですよね。今はグローバルなシーンをみると、アーティスト自体のいわんとしてることやシンガーの力、そういうことにも目が向いてきていて、若い人たちも判断基準がしっかり見えている部分があるのかな、という期待はすごくありますね。個性の強い人たちがでてきていて、「あ、これは面白いのかな」みたいな。ただちょっと悲しいのは、それがインストゥルメンタルとの世界には発揮されていない、ということなんですよね。インストゥルメンタルの世界の評価というのが厳しいのかな、というか。そこがちょっと悲しいな、という気がしています。
Q: インストゥルメンタルというお話がでたのでうかがいますが、熱帯ジャズ楽団の基本コンセプトはインストゥルメンタルなのですか?
カルロス菅野:
ヴォーカリストとのコラボレーションというのもあるかも知れませんが、熱帯としてアルバムを出す部分では、やっぱりインストゥルメンタルを基本にしたいと思っています。
アンディ・ウィリアムスショーっていう音楽ショーが大好きだったんです
Q:
カルロスさんの音楽のルーツはなんですか?
カルロス菅野:
両親が音楽好きだったみたいです。子供の頃、アメリカからの音楽番組たくさんやっていたんです。日本のTV番組でもNHKが「世界の音楽」っていうのをやっていたしね。アンディ・ウィリアムスショーっていう音楽ショーがあって、それが大好きでね。そのころジャクソン5とかオズモンド・ブラザーズとか、そういうのがレギュラーででていて、まあポップスですよね、アメリカンポップス、プラスちょっとジャズが入っているみたいな。そこで今日のゲストは「サミージェイムスJr!」って言って、ミスターボージャングを歌っているとかね。
そういうのがもう、脳裏に焼き付いているわけですよ。アンディ・ウィリアムスのクリスマスプログラムとか、もう大好きなわけですよ、そういう世界が。そこですよね、"ことのおおもと"は。その体験というか、ほんと小学生のころですから、「ああ、いいんだなあ、かっこいいなあ」と思って。そこで見たパフォーマンスとか、いろんなことが、もうとてもよかったんですよね。向こうのドラマにしても音楽がすごく映画音楽のようだったり、ビッグバンドのようだったりするじゃないですか、そういうものが耳に入っていたし・・・。でもまあ、そんなことはころっと忘れていたんですけどね、ただこんだけ長いことやっていると、「あっそうか、やっぱりあれが、すごく影響しているのかな?」なんて思いますよね。今になって。それから学生時代はずっとフォークをやったり、ロックバンドをやったりしていたんですけど。
ラテン音楽・・・バックボーンとして重要です
Q:
ご自身にとってのラテン音楽とは?
カルロス菅野:
皆さんが思っていらっしゃるほど、ラテンな人、ではないんですね、実は。(笑)パーカッションという楽器の特性上、やっぱりラテン音楽は僕のバックボーンとしては重要なものですけどね、楽器をプレイするテクニックの基礎とか、そういうことは全てラテン音楽に根ざしていますから。もちろん大好きな音楽だし。
自分の音楽経験をいろいろたどってみると、ラテン音楽より以前にポップスがあったり、ロックやジャズがあったり・・・。もう何でもいいんですよ。普段はラテン音楽よりも他の音楽を聴いているほうが多いし。こう「ラテンクレイジー」じゃないんですよね。だからああいう(曲の)セレクトになるんですよ。ラテン音楽をラテン音楽として演奏するだけでは満足できない、というか、それはそれでNYやキューバに行けば凄い人たちが山のようにいるんで・・・。
やっぱり日本人であったり、こういういう状況の中で音楽していることの大きなメリットというのは、いろいろな幅広いものに触れて、幅広い音楽活動する機会があるということです。それを十分に使って、幅広い音楽の中からセレクトする。今はアンサンブルの根幹として、ベースとして、ラテン音楽というものをポンとNJの中に芯としておいておくと、ものすごくいろいろなものの処理が明確になるんです。やっぱりバックボーンなんですよね。オーディエンスの人たちもそれがゴンときたことで、全てがわかりやすくなる"もと"でもあるし。
Q:
日本人がラテンを演奏するということの難しさはありますか?
カルロス菅野:
まあ、無くはないですね、もちろん。それはどんな音楽でも同じだと思うんですよね。4ビートのジャズをやるも難しいし。日本古来の音楽にはないリズムの解釈っていうのがたくさんありますからね。それを理解するまでに、やはり時間がかかるし、体に染み付くまでにさらに時間がかかる。僕自身、まだまだわからないこともいっぱいあるんですが、まあ律儀な民族ですしね、アナライズしていろんなことをトレイニングして身に付けていくっていう能力がすごく高いと思うんですよ。ただ、そういうものに触れていた時間が短いから、理解ができないっていうだけで。
だから今の若い子たちは日常的にそういうヒップホップとか、裏のビートが一杯あるような音楽に触れているから、どんどんそういうことがナチュラルにできる人が増えていっているじゃないですか。もう音楽的にも全然国境がなくなっているし。
僕らの先輩の時代は、全然わからない状況でスタートして、僕らでやっと、二十歳前後くらいで、向こうからの本場の情報っていうのがやっと入るようになったかな、っていうくらいの時代ですからね、ラテン音楽に関しては。これからどんどん感覚的にナチュラルにやれる人たちというのが、増えてくるだと思うんです。
たしかに難しくはあります。リズムの成り立ちを理解するということ自体が最初は難解ですよね。でも一旦その骨組みがわかってしまうと、とてもコンファタブルですし、打楽器がこんなにいるのに全くぶつからないですばらしくアンサンブルするノウハウっていうのがね、「あ、こういうことなんだ」って一度目からうろこが落ちると、どんどんそれが楽しくなってくる、っていうタイプの音楽です。
Q:
今のパート編成、構成をのようにされてということは?はラテン音楽を意識してのことですか?
カルロス菅野:
今はマキシマムです。これ以上ない、これだけいれば「もうなんでもできます」という。あとVOCALが乗っかればもう完璧です。この管楽器編成というのはビッグバンドとしては典型的ですが。
一緒に楽しくやりましょう!
Q:
これから新しく考えられていることはありますか?
カルロス菅野:
熱帯ジャズ楽団とは別に、今年はちょっと編成の小さいユニットを始動しようと思っています。レコーディングが5月で、秋ころにはアルバムをだそうと思っています。熱帯ジャズ楽団とはまた別のコンセプトで、それが熱帯ジャズ楽団にとりかわるものでは全然ないんですが。
Q:
熱帯JAZZ楽団としての海外アプローチは?
カルロス菅野:
昨年、今年とスケジュール的に厳しくて、ちょっと無理な状況ですが、ひきつづきコンタクトはとっています。ただ所帯が大きいんでメンバー全員が向こうへ行って演奏活動するということが大変なんですが、向こうのジャズフェスのサーキットに組み入れてもらうとか、そういう交渉を続けています。
Q:
ファンのみなさんへのメッセージをいただけますか?
カルロス菅野:
とにかくあたたかく見守っていただいて・・・アンケートやインターネットを通じて、みなさんの気持ちもよくわかっているつもりです。これからも一緒に楽しめるものを、どんどん作っていきたいとおもっています。楽しくやりましょう!
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熱帯JAZZ楽団のこと、ラテン音楽のこと、日本の、そして世界の音楽シーンについて等々、本当に丁寧に、そして時に熱っぽく語っていただきました。お会いする前は少し緊張してしていたのですが、実際はとても気さくな方で、終始リラックスした雰囲気で受け答えしてくださいました。何よりもオーディエンスを大切にされる心の暖かい方でした。(2000.12.14)
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写真提供:GEN-PLANNING
Interview:
S.Hatano
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