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Live Report
第18回 東京JAZZ - the HALL -


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9/1daytime & evening





Aug. 31 (Sat) evening


アヴィシャイ・コーエン・トリオ
チック・コリア・アコースティック・バンド with ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル




アヴィシャイ・コーエン・トリオ
Avishai Cohen Trio


実力者ぞろい。個性豊かなトリオによる魅惑的なアンサンブル






この日のDay1 eveningはイスラエルの天才ベーシスト、アヴィシャイ・コーエンが率いる、アヴィシャイ・コーエン・トリオとチック・コリア・アコースティック・バンドが登場。コーエンはチックに見いだされてNYジャズシーンに登場したベーシストで、チックのバンドで来日もしている。


このトリオのライブは初めてだったが、オープニング「One For Mark」の冒頭、ベースを中心にぐっと締まったキレのあるバッキングからして、このトリオの実力の高さがうかがえる。コーエンは高度なテクニックはもちろん、豊かな表現力で独創的なアドリブをプレイ。「Lo Baiom Velo Balyla」ではエモーショナルなソロを披露し、「Gesture #2 」では高音から低音までを満遍なく使った高速パッセージを聴かせた。「Face Me」では打楽器のように弓で弦を叩き、独特のリズム感を醸し出した。


ピアノのエルチン・シリノフはテクニックとしては少しクラシカルな印象を受ける。「Lo Baiom Velo Balyla」ではシンプルなテーマを美しい音色で奏で、「Gesture #1」では多彩なパッセージを駆使してアグレッシブにプレイ。流麗な音色が心地よく響いた。


この日のプログラムでは、タイトなリズムに乗って展開する曲が比較的多かったのだが、そのリズムの核となっているのがドラムスのマーク・ジュリアナだ。冒頭から淡々とリズムを刻み、無駄のないストローク、キレの良いリズムが小気味よい。最初クールな印象を受けたのだが、曲全体が次第に激しくなり、ドラムソロに突入するあたりの迫力は凄かった。タイトなリズムを刻みながらアドリブを展開した「Eleven Wives」では、繊細なストロークが次第にボリュームを増し、最後、凄まじいまでのドラミングで圧倒。盛大な歓声がに包まれた。


コーエンをはじめ、個性豊かなメンバー3人によるこのトリオは、とにかく聴きどころ満載。曲ごとにさまざまな表情を見せながら会場全体を引き込んでいったが、ラストの「The Ever Evolving Etude」はまさに圧巻。すべてが凝縮された見事なアンサンブルを聴かせ、三人三様、個性のあるソロを展開。そしてここでもジュリアナが凄まじいまでのドラミングでオーディエンスを熱狂させていた。


Members
アヴィシャイ・コーエン(B)
マーク・ジュリアナ(D)
エルチン・シリノフ(P)


Set List
1. One For Mark
2. Lo Baiom Velo Balyla
3. Eleven Wives
4. Gesture #2
5. Gesture #1
6. Face Me
7. Arvoles
8. The Ever Evolving Etude




チック・コリア・アコースティック・バンド
with ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル

The Chick Corea Akoustic Band with John Patitucci and Dave Weckl


メンバーとオーディエンスが一体となった、夢のような一夜







Day1 evening の後半は、今年の東京JAZZのメインアーティスト、チック・コリアがアコースティック・バンドを率いて登場。翌日Day2ではエレクトリック・バンドも聴けるというのだから、本当に贅沢なプログラムだ。アコースティック・バンドはベースにジョン・パティトゥッチ、ドラムにデイヴ・ウェックルというオリジナルメンバーで20年ぶりに再始動し、レコーディングも行われている。「再始動のアコースティック・バンドはいったいどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろう?」開演を待つオーディエンスの表情は期待に満ちていた。


「On Green Dolphin Street」はチックがリードしてのコール&レスポンス(以下、C&R)によるイントロからスタート。イントロに入る前、オーディエンスのチューニングから入ったのには笑ってしまった。さまざまなフレーズを楽しみながらピアノを弾くチックと、なかなか良い音感でレスポンスするオーディエンス。会場はステージと一体となる喜びに包まれていく。しっかりワンテーマ、C&Rで奏でたあと、美しいピアノサウンドがふわっと広がり、バンドアンサンブルがグルーヴィーにスタートしていく。まさに極上の瞬間だ。チックは多彩なパッセージを次々と繰り出し、パティトゥッチは柔らかく深みのある音色でテンポよいアドリブをプレイ。ウェックルは抜群のバランス感覚でさまざまなパターンを織り交ぜながら、キレのよいドラミングを披露した。


チックが休暇で京都滞在中に作った曲「Japanese Waltz」では、日本的ということの象徴なのか、繊細なピアノのパッセージが印象的。クリアなピアノサウンドが織りなすような音の層を作り、まさにファンタスティックの一言。そしてグルーヴィーなベースが一層、際立った「That Old Feeling」では、パティトゥッチが縦横無尽なベースソロを展開した。


4曲目はスタンダードナンバー「In a Sentimental Mood」。イントロはクラシックの印象派のようにアレンジされていて、繊細な音の流れ、美しいハーモニーと、チックならではのピアニズムを堪能。この曲ではパティトゥッチが伸びやかなボウイング奏法も披露した。


続く「Life Line」、アヴィシャイ・コーエンのための曲は、アップテンポでリズミックに展開。リズムを際立たせるアヴィシャイの楽曲を彷彿とさせる。リズミカルなテーマを3人のユニゾンで鮮やかに決め、曲の展開とともにチックのプレイにもより熱がこもっていく。全体がヒートアップしていったところでのウェックルのドラムソロは圧巻。(途中からチックがドラムの後ろに移動して観客のように聴いていた。)次から次へと多彩なストロークを繰り出しながら激しさを増していき、フィニッシュとともに大歓声に包まれた。

その名の通り、クラシカルなテーマをモチーフに展開した「Scarlatti Prelude」では、直接ピアノの弦を弾く奏法も取り混ぜながら展開。ノリの良い「That Old Feeling」では、ピアノとドラムスのバランスよく絶妙にコントロールされたアンサンブルが聴きごたえ満点。最後、パティトゥッチがボウイングで奏でるテーマが深く響いていた。

一旦、ステージを降りたメンバーがすぐに戻り、アンコールでお待ちかねのSpainがスタート。ここでも冒頭、アランフェス協奏曲のテーマからC&Rでスタート。後半のテーマもC&Rで奏でるなど、もやはオーディエンスは4人目のメンバーとなり、ラストまで一体となってフィニッシュした!最高のトリオによるパフォーマンスを、一体となって楽しんだ。まさに夢のような一夜となった。


Members
チック・コリア(P)
ジョン・パティトゥッチ(B)
デイヴ・ウェックル(D)


Set List
1. On Green Dolphin Street
2. Japanese Waltz
3. That Old Feeling
4. In a Sentimental Mood
5. Life Line
6. Scarlatti Prelude
7. You and the Night and the Music
8. Spain (ENCORE)



レポート:Asako Matsuzaka
画像提供:第18回 東京JAZZ
撮影:中嶌 英雄、岡 利恵子
Special thanks to TEAM LIMITED.


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