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Concert Report
2019 セイジ・オザワ 松本フェスティバル
オーケストラ コンサート Bプログラム
会場:キッセイ文化ホール
2019年9月7日
2019 セイジ・オザワ 松本フェスティバル(以下、OMF)を締めくくったのはオーケストラ コンサート Bプログラム。演奏されたのは、モーツァルト「ハフナー」、チャイコフスキー「悲愴」とレブエルタスの「センセマヤ」。二大交響曲とサイトウ・キネン・オーケストラ(以下、SKO)初演の「センセマヤ」が聴けるということで、否が応でも期待が高まった。
この日のプログラムは「センセマヤ」からスタート。20世紀のメキシコを代表とするシルベストレ・レブエルタスによる作品でレブエルタスの革新性や類まれな資質が表れている傑作だ。少々不気味な「蛇殺し」の儀式をイメージした曲で、冒頭から続く普遍的なリズムの上で曲が進行していく。決断的なリズムを刻むティンパニー、不協和音を伴ったエキセントリックなフレーズはスリリングな映画のワンシーンが目に浮かぶようだ。音量が増すとともにオーケストラ全体が強靭になり、迫りくるようなサウンドが圧巻だった。指揮のディエゴ・マテウスはレブエルタスと同じ南米の出身。個性あふれるこの楽曲と一体となって全身で表現していた。続く「ハフナー」は非常に流麗。心地よい調べに包まれた2楽章「アンダンテ」を挟んで、4楽章まで軽やかに、華やかに展開した。
そして第2部の「悲愴」。第一楽章ではファゴットの音色に導かれ、緊迫感ある中で展開する第一主題と、弦が優美に歌う第二主題の対比が見事。そしてより激しくスピーディーに展開した後半で艶やかで透明感のある弦が高音域から滑り落ちていく様は表現しようがないほど美しくてスリリングだ。大きくうねる悲愴感に満ちたオーケストラサウンドを全身で体感した。
5拍子のリズムにのって心地よく展開した第2楽章では抑揚たっぷりに奏でるメロディーに引き込まれる。ここでも透明感ある弦の音色が素晴らしい。深い悲しみを湛えた中間部は深い感動を呼んだ。
スピーディーなプロローグからノリ良く、力強く行進した第3楽章。ベースを刻むコントラバスのピチカートが全体のグルーヴを引き出し、強靭な金管のフレーズがより全体の勢いを増していく。迫力あるオーケストラサウンドと一緒にワクワクするリズムを体感した。
最高潮に達した第3楽章の興奮が冷めやらぬ中、深い悲しみを湛えたメロディーが流れる。捉えどころのない不安感が見事に表現され、聴く者の心を打つ。やがて大きく美しいメロディーが大きく広がり、次第に静かなフィナーレを迎えた。SKOならではの精神性の高い音楽表現で、心震わせる感動を味わせてもらった。
そしてこの日はSKOからの素敵なプレゼントがあった。演奏終了後、嵐のような拍手が巻き起こったが、この日はもう1曲、アンコールが用意されていた。演奏されたのは「エフゲニー・オネーギン」からポロネーズ。高らかに輝かしいポロネーズが響き渡っていた。
曲目
第1部
シルベストレ・レブエルタス:センセマヤ
モーツァルト:交響曲 第35番 ニ長調 K. 385 「ハフナー」
I. アレグロ・コン・スピーリト
II. アンダンテ
III. メヌエット
IV. プレスト
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 Op. 74 「悲愴」
I. アダージョ・アレグロ・ノン・トロッポ
II. アレグロ・コン・グラツィア
III. アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ
IV. フィナーレ:アダージョ・ラメントーソ
アンコール)
チャイコフスキー 「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ
演奏:
サイトウ・キネン・オーケストラ
オーケストラ出演者一覧
指揮:ディエゴ・マテウス
レポート:Asako Matsuzaka
撮影: Michiharu Okubo, Takeshi Yamada
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