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Concert Report
2019 セイジ・オザワ 松本フェスティバル
オペラ「エフゲニー・オネーギン」
会場:まつもと市民芸術館・主ホール
2019年8月20日
今年の2019 セイジ・オザワ 松本フェスティバル(以下、OMF)では、3日間に渡って「エフゲニー・オネーギン」が公演された。実力者ぞろいの歌手たちによる迫真の名演、繊細かつ壮大なサイトウ・キネン・オーケストラ(以下、SKO)の演奏、プロローグからエンディングまで美しい絵画を見るような舞台芸術、指揮者のファビオ・ルイージはオーケストラと一体となって見事なステージを作り上げていた。
オペラ公演初日となったこの日、エフゲニー・オネーギンを演じたのは大空宇宙。すでに海外でのオペラ出演で高く評価されているが、日本ではこの日がオペラデビューとなった。当初、出演を予定していたレヴァント・バキルチが体調不良のため降板し、急遽の出演となったのだが、力強いバリトンと真に迫る演技は見事で堂々たる存在感で演じきった。
プロローグ~第一幕。メランコリックなメロディーが流れ、枯葉が舞い落ちる中、一人椅子に座るオネーギン。そして幕が開くと素晴らしい映像美に目を奪われる。紅葉も鮮やかな落ち葉が一面に敷き詰められ、その中で一幕は物語が進行していく。しっとりと聴かせたラーリナ夫人と乳母の二重奏、迫力ある農婦たちの合唱と、次第に物語に引き込まれていく。タチヤーナ、オリガ、オネーギン、レンスキーによるの四独唱は聴きごたえ十分、舞台に溶け込むようなオーケストラサウンドが素晴らしかった。
タチヤーナ役、アンナ・ネチャーエヴァのソプラノは透き通るような美しさと高音の抜けの良さが素晴らしく、情感たっぷりに歌った「タチヤーナのネーギンへの手紙」では切ない恋心がひしひしと伝わってくる。そしてこのシーンのオーケストラサウンドは素晴らしく、タチヤーナのボーカルを優しく包み込むようなハーモニーが絶品で深く心に響いた
。「タチヤーナの寝室」も落ち葉の中にセットされており、より一層、抒情的な雰囲気を醸し出していた。
二幕は華やかな歌と踊りで展開した。オリガ役のリンゼイ・アンマンは明るくコミカルに演じ、トリケ役、キース・ジェイムソンは艶やのある美しい高音を披露。軽やかな演技とともに魅了した。
そしてクライマックスとなる三幕。静かな中で演じられた決闘の場面は、とても強いインパクトを残した。ブルーのライティングのみステージで薄い幕の後ろで演じられ、それがこの場の悲愴感をより印象づける。レンスキーの悲痛な絶唱(「レンスキーの詩」)は、その感情表現が見事で、伸びのあるロングトーンが響き渡った。最後、銃弾に倒れたレンスキーの後ろに太陽が昇っていくシーンはオレンジのライティングによるものだったが、本当の日の出のようで、その場に漂う悲しみとともにその情景が心に残った。
決闘シーンのあと、輝かしいポロネーズが高らかに流れ華やかな舞踏が始まる。東京シティ・バレエ団による鮮やかなキレのよいステップやジャンプは見どころ満点。グレーミン公爵役、アレクサンダー・ウィノグラドフは重厚な深みのあるバリトンを披露した。
そして場面が変わり、スポットライトの中でのタチヤーナとオネーギンのラストシーン。緊迫感漂う中で演じられ、心の葛藤に苦しむ2人の心情が見事に演じ、悲しみに満ちた2人のデュオがオーディエンスの心を動かした。幕が閉じた瞬間、ブラボーの声とともに盛大な拍手が鳴り響き、いつまでもカーテンコールが繰り返されていた。
【写真】
左上より下に向かって<第一幕1場、第2幕1場(オネーギンとレンスキー)、第3幕1場(グレーミン公爵)>
右上より下に向かって<第一幕1場(レンスキーとオリガ)、第3幕1場、第3幕2場(タチヤーナ)>