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Special Report
第16回 東京JAZZ
16th TOKYO Jazz FESTIVAL Official Site
9/2 daytime -THE JAZZ STREAM
9/2 Evening -FROM SHIBUYA TO THE WORLD
9/3 daytime -CELEBRATION!
9/3 Evening -JAZZ SHOWER
Sep. 2 (Sat) Daytime
THE JAZZ STREAM
山下洋輔 寿限無2017 with 坂井紅介、小笠原拓海、渡辺香津美、菊地成孔、類家心平、OMSB
Go Go Penguin
THE COREA / GADD BAND
山下洋輔 寿限無2017
with 坂井紅介、小笠原拓海、渡辺香津美、菊地成孔、類家心平、OMSB
第16回 東京JAZZのトップを飾るのは日本のフリージャズの創始者というべき山下洋輔が1981年の記念碑的作品「寿限無」を錚々たるメンバーで再現するステージ。
山下洋輔といえば独自のピアノ奏法で60年代ジャズ界を仰天させ、また数々の映画音楽の作曲や著作、果ては坂田明や赤塚不二夫とともにタモリを発掘した事でも知られるマルチタレントな面が強調されるが、国立音楽大学作曲科出身であり、クラシックの理論を身に着けた正統派でもある。
「ファースト・ブリッジ」で幕を開けるステージは次の「ミュージック・ランド」で期待の新人・類家心平をフィーチャーし、盟友・渡辺香津美を迎えた「漂遊ニ長調」、もはや日本ジャズの中枢とも云える菊地成孔と類家心平の競演で聞かせる、亡き武田和命を偲んだ「ワン・フォー・T」、そして全員とラップ・シンガーのOMSB(オムスビ)をフィーチャーした、落語に出てくる長い名前「寿限無」に音をつけた「寿限無」を演奏。
「ワン・フォー・T」での菊池が聞かせるサックスの全音域を使った無伴奏ソロや「寿限無」でのラップとドラムスのバトル、「漂遊ニ長調」の冒頭の渡辺香津美の流麗なギターソロ、そして山下の「ワン・フォー・T」でのクラシカルな要素を垣間見せるピアノソロなど見せ場たっぷりのステージで開場を沸かせ、これから2日間にわたり繰り広げられるホール・コンサートの幕開けに熱を吹き込んだ。
Members:
山下洋輔(p)、坂井紅介(b)、小笠原拓海(ds)、渡辺香津美(g)、菊地成孔(sax)、類家心平(tp)、OMSB(rap)
SET LIST
1. 第一橋堡
2. 音楽乱土
3. 漂遊ニ長調
4. One for T
5. 寿限無
レポート: Tatsurou Ueda
Go Go Penguin
ポスト・ロックと現代ジャズの融合、エレクトロニカをアコーステッィク楽器で演奏するゴーゴー・ペンギンが登場。
アコースティック・ピアノ、アップライト・ベース、シンプルなドラムセットという典型的なジャズトリオの編成ではあるものの、それをもって演奏するのはポスト・ロックのアンビエントな感覚、ミニマル・ミュージックに由来するリズムとメロディーの反復を徐々に発展させるエレクトロニカ、そして細かいポリリズムを刻みつつダイナミックなヒップホップやブレイク・ビートを融合し、ジャズのコンテクストをちりばめた楽曲だ。イギリスのマンチェスター出身の彼らはこれまでにインディーズのゴンドワナ・レーベルから2枚、そしてブルー・ノートから昨年「Man Made Object」をリリースしている注目の若手バンドだ。
ピアノに薄っすらとオクト・リバーブ(原音のオクターブ上の成分を強調したリバーブで、ストリングスの高域を付加したような効果を出す)やフリーズ(原音を数ミリ秒間サンプル&ループして持続させる)と思しきエフェクターをかけた導入部が新鮮な驚きをもって聴衆を包み込む1曲目の新曲「Untitled」は、中間にスリリングなブレイクやリリカルなベースソロを挟んでぐいぐいと進行する。複合するリズムとメロディーの展開はこれまでにも2回東京ジャズに参加しているノルウェーのJaga Jazzistに似ている。
ピアノ弦を指でミュートしたりはじいたりしながらの導入部に弓弾きベースが絡む2曲目「Initiate」は、映画「最強のふたり」の音楽で知られるイタリアの作曲家・ピアニストであるルドヴィコ・エイナウディの曲調に近い。
3曲目の「Break」では前述のオクト・リバーブを効果的に使ったピアノで奏でる、キース・ジャレットを思わせる静謐な導入部から、開放弦の通奏音を巧みに使ったベースソロとそこから入ってくるドラムスのエレクトロニカ的な細かいリズムでの疾走感が爽快な印象を与える。
続く4曲目「Branches Break」は淡々と繰り返されるピアノのコードに弓弾きのベースが乗り、シンプルなドラム・ビートがトランス的な印象を与える。ピチカートで奏でるベースのソロも秀逸。5曲目「One Percent」はワン・ノートで反復するピアノに心臓の鼓動のように響くドラムスのキックと弓弾きのベースが合わさり、徐々に盛り上がる、全体を通じて高揚感に満ちた演奏だが、終盤のダンサブルなアンサンブルの中で、DJのブレイク・ビートやスキップ・ビートを手足でやるドラムスの妙技は圧巻。
続く6曲目「All Res」は弓弾きのベースとピアノの反復するメロディーに細かく刻むドラムスがかぶさってくるイントロからのハーモニーとリズムの絶妙なせめぎあいに引き込まれる。緩急をつけた曲の展開が心憎い。7曲目「Garden Dog Barbeque」はミニマルなピアノとロック・ドラムにベースのユニゾンが実にタイトに決まる導入部からして実にスリリングだ。ぴったりと息の合った演奏はバンドとしての一体感を際立たせる。
8曲目の「Hopopono」はピアノのスローなイントロから細かいリズムに変わり、雨音や葉擦れのような自然の音を模したかのような、絵画的ともいえる印象の佳曲だ。最後の「Protest」は攻撃的な連符のビートを奏でるベースからポリリズム的なドラムスとピアノのブロック・コードがエモーショナルかつ未来的な感覚で盛大に盛り上がる。
まだ二十代と云うゴーゴー・ペンギンだが、3人の斬新な曲作りと卓越した技術を堪能したステージだった。来年1月に予定されている新作にも期待したい。
*ちなみにバンド名のゴーゴー・ペンギンというのは、メンバーによると、ずっと以前にリハーサルで使っていたスタジオに置いてあった、オペラの小道具の奇妙な形のぬいぐるみにつけた名前だという。それがペンギンのように見えたのだが実はペンギンではなくカササギだったので、奇矯さや卑俗さを意味する「gogo」をつけて「ゴーゴー・ペンギン」と名づけたことに由来するとのこと。
Members:
クリス・アイリングワース(p)、ニック・ブラッカ(b)、ロブ・ターナー(ds)
SET LIST
1. Untitled
2. Initiate
3. Break
4. Branches Break
5. One Percent
6. All Res
7. GDB
8. Hopopono
9. Protest
レポート:Tatsurou Ueda
THE COREA / GADD BAND
チック・コリア、スティーブ・ガッドという2大アーティストががっぷり四つに組んだ新バンド。他のメンバーもギターがリオーネル・ルエケ(西アフリカ)、ベースがカリートス・デル・プエルト(キューバ)、パーカッションにルイシート・キンテーロ(ブラジル)、サックスがスティーヴ・ウィルソン(イギリス)と、国際色豊かだ。聴くのは今回が初めてだが、なんとなくラテン色が濃いのかな?という気がしていた。
1曲目はアルバム「My Spanish Heart」から「Night Streets」、やはりラテンフュージョンからスタート。キンケーロのパーカッションとガッドのドラムスがテンポよくラテンのリズムを刻んでいき、コリアがメランコリックなメロディーをエレピで奏でる。この人のラテンバッキングは、不思議なくらいワクワク、ゾクゾクさせる。ルエケはヴォイスも聴かせながらのギターソロを聴かせ、コリアはエレピとシンセを駆使した縦横無尽のソロで魅了する。そしてガッドとキンケーロのリズムセクションによるコンビネーションプレイは聴きごたえ十分だった。
一気にボルテージが上がった「Night Streets」のあとは、ふわりとしたサウンドが会場を包み込んだ「Serenity」。ルエケがナチュラルなボーカルを聴かせ、ウィルソンがフルートで柔らかなメロディを奏でる。プエルトはウッドベースに持ち替え、メロディアスなソロをプレイした。
軽快なテンポにのった「CHICK's Chums」では改めてガッドのプレイに感服した。淡々とリズムを刻んでいても、その存在感は圧倒的で、瞬間のキメの鋭さはさすが。熱のこもったサックスソロ、軽妙なKeyソロ、ディストーションを効かせた音色でのロック色溢れるギターソロと、次々に展開されるプレイを大いに楽しんだ一曲だった。
ラストナンバーはまさかの「Return to Forever」。森の中にいるかのようなネイチャーサウンドが広がり、エレピのテーマへと続いていく。繊細なパッセージを重ねていくエレピとフルート、ヴォイス、パーカッション、パーカッション・・・様々なサウンドに彩られながら展開していった。
Members:
チック・コリア(key)、スティーヴ・ガッド(ds)、リオーネル・ルエケ(g)、
カリートス・デル・プエルト(b)、ルイシート・キンテーロ(per)、スティーヴ・ウィルソン(sax,fl)
SET LIST
1. Night Streets
2. Serenity
3. CHICK's Chums
4. Return to Forever
レポート:Asako Matsuzaka
画像提供:第16回 東京JAZZ
撮影:中嶌 英雄、岡 利恵子
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