<Home>



Concert Report


2017 セイジ・オザワ 松本フェスティバル
オーケストラ コンサート Cプログラム

Sep 8 2017 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)




鳴りやまぬ拍手と歓声
時にダイナミックに、時に繊細に
深い感動を呼んだベートーヴェン






「楽器クリニック開催 ~サイトウ・キネン・オーケストラのメンバーによる楽器レッスン~」はこちら



8月11日より開幕した「2017 セイジ・オザワ 松本フェスティバル」。その締めくくりとなる「オーケストラ コンサート Cプログラム」が9月8日、10日の2日間に渡って開催された。


Cプログラム前半はオーケストラ団員たちによるグリーグの組曲「ホルベアの時代より」とR.シュトラウスの「13管楽器のための組曲 変ロ長調」で、グリークは25名の弦楽器奏者、そしてシュトラウスは13名の管楽器奏者によって演奏された。名手ぞろいのサイトウ・キネン・オーケストラの弦、管、それぞれのハーモニーをじっくりと聴くことができる、とても興味深い内容だった。


瑞々しい弦のハーモニーが心地よく広がる「前奏曲」から始まった「ホルベアの時代より」。

第2曲「サラバンド」では表現力豊かなメロディーを堪能し、軽やかなリズムにのった第3曲「ガヴォット」ではベースラインを奏でるようなコントラバスの音色を楽しんだ。



第4曲「エア」のメロディーはたとえようもなく美しく、ラスト、ステップを踏むように軽やな「リゴードン」まで、第一ヴァイオリンを中心とした、一糸の乱れもない見事なアンサンブル、サイトウキネンの弦による“珠玉のハーモニー”を存分に堪能した。



ストリングスの響きを楽しんだあとは「13管楽器のための組曲 変ロ長調」。フルート2本、オーボエ2本、ファゴット2本、コントラファゴット1本、クラリネット2本、ホルン4本という編成だ。

柔らかなフルートと美しいオーボエの音色が印象的だった「前奏曲」。ホルンが抒情的なメロディーを奏でた「ロマンツェ」はバレエの情景が目に浮かぶよう。コミカルな雰囲気で味わいのある「ガヴォット」、終曲の「序奏とフーガ」では優美な「序奏」からアップテンポな「フーガ」へと展開。

凝縮感のあるアンサンブルを聴かせた。前奏曲から最後のフーガまで、13本の管でここまで表現できるのか、と思うような変化にとんだ展開でドラマティックな世界を作り出し、観客を魅了した。





そしていよいよ、プログラム後半は小澤征爾、内田光子によるベートーベンピアノ協奏曲第3番。最高峰の二大アーティストの競演に否が応でも期待が高まる。

第一楽章の冒頭、重厚なオーケストラサウンドが抑揚豊かにうねり決断力のあるティンパニーが響く。そして序奏のあと、ピアノが入る前の瞬間、会場全体が息をのむようでゾクゾクした。

内田光子の奏でるピアノの音色は本当に美しく、そして説得力がある。一音一音、吟味しつくされた音色で表情豊かなベートーヴェンの世界を紡ぎだしていく。ハーモニー感あふれるカデンツァも素晴らしく、特にラストの美しいトリルは圧巻。

ピアノとオーケストラは溶け込むように調和し、ドラマティックに展開。小澤はオーケストラを持ち上げるように力強くひっぱる。 一楽章ラストのキメの瞬間、小澤のエネルギーが全体に伝わるのを感じた。
そして第二楽章の美しさは例えようもない。ピアノのメロディーが優しいメロディーを奏でオーケストラがそれに呼応していく。ピアノの音色は宝石のように美しく、それをオーケストラが柔らかく包み込むようで、そのハーモニーは絶品、深い感動的な時間が流れた。

ピアノ、オーケストラともに、よりアグレッシヴに、より力強く展開した第三楽章。その中でリズミックなキメが一つひとつ、小気味よく決まるのが気持ち良い。内田が縦横無尽に速いパッセージを奏で、小澤はオーケストラを煽るようにぐいっと引きつける。そしてラスト、流れるようにスピードが増していき、この壮大なコンチェルトはエンディングとなった。

演奏が終わった瞬間の感動はとても言い表せない。終わった瞬間、ブラボーの声がかかり、盛大な、というよりも嵐のようなすごい拍手が鳴り響き、その拍手は10分あまりの間、鳴りやまなかった。




<プログラム>

グリーグ:組曲「ホルベアの時代より」Op.40 (1st Vn 豊嶋 泰嗣)

R.シュトラウス:13管楽器のための組曲 変ロ長調 Op.4
* グリークとR.シュトラウスは指揮者なし

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op.37


演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ

オーケストラ出演者一覧
http://ozawa-festival.com/2017/08/2017OMF_CProgram_SKOMemberList.pdf



指揮:小澤 征爾(ベートーヴェン)
ピアノ:内田 光子



レポート:Asako Matsuzaka
撮影: Asako Matsuzaka, Michiharu Okubo, Takashi Yamada


本サイト内の文章、写真、イラストほか、すべてのデータの無断転載を禁じます。
Copyright (C) 2017 Global Artist Network. All rights reserved.