<Home>
<Info.
from Artists>
LIVE
REPORT
マイク・スターン・バンド
/ Mike Stern Band
6th
January 2005 at Motion
Blue yokohama, 11st January 2005 at BLUE
NOTE TOKYO
4人の愛すべきミュージシャンたちの共演。心と技が一体となった素晴らしい瞬間、音楽を表現する楽しさを体感されてくれた。
年明け、マイク・スターン・バンドを2週続けて聴く、という幸運に恵まれた。マイク・スターン・バンドを聴いたのは数年前のことである。今回よりも若干キャパが大きな会場で、ドラムとサックスは今回と同じデニス・チェンバースとボブ・フランセスチーニ、そしてベースはリンカーン・ゴーインズであったと思う。前回は残念なことに数曲しか聴くことができなかったのだが、その時の印象は、とにかく怒涛のように押し寄せる迫力のドラミング、そして洗練された、カッコよい超絶テクのギターであった。特にデニスのドラミングについては「おお、戦車のようだ〜」と思ったことが記憶に残っている。
白状してしまうと、私がマイク・スターン・バンド実際に聴いたのは前回が初めてであり、まだまだマイクスターン初心者のまま、この1月のライブ会場に向かったわけである。
Motion
Blue yokohama
1月6日セカンドステージ、Motion Blue yokohamaでのラストステージである。ラストということもあって、ステージに登場したメンバーはとてもリラックスしていた。そのリラックスムードの中、サクサクと1曲目Playのリフをバッキングし始めるマイク。ギターとサックスがユニゾンで奏でるキメのパッセージもさらりとこなす。実に肩の力の抜けたよい感じで演奏はスタートしたが、この日の演奏を一言で表現すると、センシティブ・サウンドと言える。演奏が佳境になればなるほど、エキサイトし迫力が増す、と同時に内面に向かう、繊細さな集中力も増していく(うまく表現できないのだが)、といった印象を持った。
1曲目から各メンバーの熱のこもったソロパートが順々に展開され、その演奏時間は30分近くにおよんだが、マイクのギタープレイは、盛り上がるにつれ、次第に緻密さを増し、デニスはポリリズムを巧みに織り込みながら、その繊細な技巧を聴かせた。演奏が全てにおいて反応のよいベースワークを聴かせたリチャードは、ソロパートで、その抜群のリズム感と音楽性にとんだ高度なテクニックを披露。そしてボブはゆったりとしたスウィングからスピーディーにリズムチェンジしながら、力強いブロウとともに洗練されたプレイを聴かせた。とにかく1曲目の途中で、「すごい!」と言わずにいられない演奏で、ぐいぐいとオーディエンスを惹きこんでいった。
よりスリリングに、パワフルにスケール大きく展開したSlow Changeでエキサイトした後、マイクとリチャードのデュオから始るWishing Wellへと進む。とにかく美しく軽やかなデュオ。今回のステージを特徴づける要素としてリチャードの参加がある。彼は驚くべき超絶技巧のベーシストであるとともに、優れたボーカリストでもある。その美しい伸びやかな歌声で、アフリカンビートを基調としながら、さまざまな音楽を取り入れたワールドミュージック、大地に根ざしたネイチャー・ミュージックとも言える独自の世界を展開している。マイクの繊細なメロディーとリチャードの美しい歌声、自然に刻むビート・・・途中からデニスとボブも加わり、心穏やかな世界が展開された。
続くWhat Might Have Beenも美しいバラード。トーンを変化させながら繊細なタッチで自在になめらかなパッセージをつむいでいくマイク。ギターとサックスの奏でるメランコリックなメロディー。この曲でもリチャードがヴォーカルを聴かせる。マイクは一音一音に微妙なアーティキュレーションの変化をつけ、感情豊かに表現。憂いを湛えたバラードは会場に静かな感動をよんだ。
再びマイクとリチャードがステージに残り、今度はフリースタイルでデュオが展開された。小気味よいマイクのカッティングに、ベースの面をドラムのようにたたき、スラップで弦を弾きながら、絶妙なグルーヴを生み出していく。まるでスタジオで軽くセッションでもしているように、自由に遊びながらどんどん展開していく。2人のアーティストが思いつくまま展開する世界に、またしても惹き込まれていった。
リチャードのヴォーカルからChatterのイントロへと続き、歓声が沸く。ステージにフルメンバーが揃い、絶妙のリズムコンビネーションを聴かせるベースとドラムス。マイクのソロもより高らかに伸び伸びと歌う。バンド全体のメンバーシップがとてもよく、そこから生まれるアンサンブルは絶妙のものがある。ここでデニスは、マイクの奏でるリフのうしろでさまざまなリズムを叩き分けるという、再びポリリズムを多用したストロークを展開する。終演後、このポリリズムについて訪ねたとき、彼自身「センシティブなサウンド、バンドだからね」と語っていた。続くドラムソロでは、これまで押さえていた(?)パワーを存分に出し、嵐のようなストロークで迫力のソロプレイを聴かせた。
エンディングはChatterからFree
Styleのノリのよい8ビートに突入し、パワフルに展開。とにかく最後まで全員やり放題!といった感じの痛快なエンディングとなった。
BLUE
NOTE TOKYO
Motion Blue yokohamaでのサウンドをまだ頭に残しながら、BLUE NOTE TOKYO のライブに向かった。先のライブは横浜でのラストステージであったこともあって、とてもリラックスして会場全体が盛り上がっていた。さて今日は?・・・まずメンバー登場からして、先週よりもさらにリラックスムード。ステージはその全体構成から曲のアレンジ・構成まで、ほぼMotion
Blue yokohamaの時と同じであった。が、全てがよりアグレッシヴで、自由奔放、メンバーそれぞれが存分にその力量を発揮していた。
やはり圧巻だった1曲目のPlay。リフに入るや否や、すぐにマイクはインプロヴィゼーションを展開しはじめ、機知に飛んだアイデア満載のソロでは、後半、ロックフィーリングあふれる白熱のプレイをたっぷりと聴かせた。デニスの刻むリズムも繊細なストロークを重ねながらも激しさを増しながら鋭く切り込んでいく。冒頭からバンド全体がノリにのっていて、ぐんぐんスピードアップしていく。ボブのサックスもブロウが凄い。テンポチェンジしたスローパートでは洗練されたテクニックで、エモーショナルなプレイを聴かせた。リチャードはオクターヴァーを効果的に使用して音に表情を加え、そしてギタリストさながらのテクニックで速いパッセージを次々と繰り出す。そして最後を締めくくったデニスのソロは、ハイハットでリズムキープしながら雨あられと激しいストローク繰り出す。パワフルなドラミングと繊細なリズムワーク・・・集中したドラミングでオーディエンスを熱狂させた。
へヴィはベースが心地よいSlow Change。どんなに激しい時でも常に的確にコントとロースされたドラムス、ダイナミックなサックス。そしてマイクのギターはいつに増して、よりワイルドでソウルフルだった。
リチャードの、心洗われるような美しいヴォーカルを堪能したWishing WellとWhat Might Have Been。明るく軽やかなWishing Wellと繊細な表現で聴かせたWhat Might Have Been。静かで穏やかな、心地よい時間が流れた。
小気味良いビートにのった拍手で始ったマイクとリチャードのデュオパート。先週にも増して、2人の自由度が増す。一人が思いつくままフレーズを奏で、一人が調和していく。もう途中から両方とも完全に遊びだし、その中でリチャードはベースの高速フレーズと自信のヴォーカルをユニゾンで重ねるという技も披露。まるでスタジオの中にいるような雰囲気でフリーセッションを堪能した。
そろそろ佳境、ノリのよいリフにのって始まったChatter。テーマを経てドライブ感あふれるギターソロへと突入。そしてサックスソロに渡る時の盛り上がりとテンションの高いブロウは圧巻だった。迫力たっぷりのボブのソロ。怒涛のようなドラミングと多彩なリズムコンビネーションを交互に聴かせたデニスのドラムソロ。やはり今回は、完全にコントロールされた中でのパワフルなハードヒットと繊細なテクニック、というところにポイントがおかれているようだ。その見事な展開に改めてドラマー、デニス・チェンバースの凄さを感じた。
Chatterからそのまま突入したエンディングは、とにかくカッコいいFree Styleの8ビート。マイクとボブが繰り広げる自在にアドリブは、凄まじい音の応酬となっていく。最後までワイルドにハジけるマイクのギター。最後、全員がヒートアップし、うねるような音の洪水の中でのフィナーレとなった。
名実ともに世界最高とされるミュージシャンたちによるステージは凄い、素晴らしいの一言につきる。ただ、こうまでもオーディエンスを惹き付けて止まないのは、その音楽が、彼らの音楽を愛する気持ちであふれているからであろう。マイク・スターン・バンド、4人の愛すべきミュージシャンたちは、心と技が一体となった時の素晴らしい瞬間、音楽を表現する楽しさを体感されてくれた。
Musicians
(Motion Blue Yokohama, Blue Note Tokyo):
Mike Sternマイク・スターン (Guitar) http://www.mikestern.org/
Rechatd
Bonaリチャード・ボナ (Bass) http://www.bonatology.com/
Dennis
Chambers デニス・チェンバース(Drums) http://www.dennischambers.com/
Bob
Franceschiniボブ・フランセスチーニ (Sax)
Set List (Motion
Blue yokohama, BLUE NOTE TOKYO ):
1. Play
2. Slow Change
3. Wishing Well
4.
What Might Have Been
5. Duo(Free Style)
6. Chatter〜Ending(Free Style)
Report
by Asako Matsuzaka
Many Thanks To Motion
Blue yokohama, BLUE
NOTE TOKYO
Copyright (C) 2004 Global Artist Network. All rights reserved.