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LIVE
REPORT
PRISM・・・LAST
LIVE at Roppongi PIT INN
―"ありがとう"、そして"さようなら"六本木ピットイン―
18th
July, 2004 PIT INN Roppongi
日本フュージョン界の草分けにして最重要バンド、プリズムが展開する音の綴れ織。
三人のテクニシャンと二人のゲストが繰り広げるエモーショナルでスリリングなパワーフュージョンを堪能した夜。
PRISM
Offiical Site: http://www.prism.tv/
PRISM
-Homecoming 2004 Vol. 2
六本木ピットインの想い出
プリズムは言わずと知れた日本のトップ・フュージョン・バンドである。77年のデビュー以来コンスタントに活動を続け、四半世紀以上にわたってシーンをリードしつづけてきたわけだが、そのライブに接してみるとそのダイナミックな音作りには今更ながら驚きを感じざるを得ない。というのも、スタジオ盤や過去のライブ作品と比べて、より先鋭的に切り込んでくる音を聞かせてくれるのだ。
ビルの建替えのため今月26日で最終日を迎える六本木ピット・インでのプリズムのライブはこれが最後である。今後は他の会場で続けて行くことになるわけだが、古くからのファンにとっては思い出深い場所であるだけに今夜の会場の雰囲気もライブへの期待感の高まりと同時になにやら感慨めいたものが感じられる。
和田アキラ、木村万作、岡田治郎の3人がステージへ上がり、一曲目の「Maze」が始まる。2002年のアルバム「In the Last Resort」からの曲である。トリオ編成ながらウェザー・リポートを思わせる様なヘヴィーな音である。木村万作のドラムスと岡田治郎のベースによるタイトなリズムセクションに乗って和田アキラのギターが縦横に駆けめぐり、9拍子で進行するリフ・パートがスリリングな感覚を生み出している。リズム・ブレイク部のベースのハーモニックスが良いセンスを感じさせる。ベース・ソロはジェフ・バーリンを想起させる柔らかい音で展開するが、音数が多くスピード感のあるものだ。続くドラムスのソロも短い中に充分に組みたてられた迫力に満ちたものである。和田アキラの時折聞かせるクランチーなシュレッド・ファズの音が曲の緊張感を煽るようで秀逸である。
次の曲は92年の「A Personal Change」から「Firefly」。ミディアム・テンポで奏でるメロディアスな曲で、ボーカル曲としてもいけそうなギターのフレーズに続いてこれも歌心あるベース・ソロが続く。スタジオ盤では途中にアコースティック・ギターをフィーチャーしているが、ここではエレクトリック・ギターの音を変えてバリエーションを作り出している。全体の曲調としてはタイトルどおり、夏の夕べに蛍が舞うのを見るような、穏やかで楽しげな曲であるが、後半のギター・ソロはRocktron(エフェクター)の太い音を活かしたダイナミックな演奏で、80年ごろのアラン・ホールズワースを彷彿とさせるようなロックっぽさを感じさせる展開を見せる。
ここで新曲が披露された。「Angry Lady」というタイトルのハードなロック・ナンバーだ。クランチーなギターの音と、ドライブ感あふれるドラムスが骨太な音を叩き出す。音数が多いながらもグルーヴするベースに乗って弾きまくるギターが痛快だ。このあたり、敢えて音楽性の違いを差し置いて、スタイル的に言えば80年代のスティーブ・モース(元ディキシー・ドレッグス、現ディープ・パープル)に近い感じといえる。途中のスロー・パートでは上手く抑揚をつけた好展開を見せるが、ここはゲイリー・ムーアの泣きのギターに勝るとも劣らない。
次の「Napoli」はやはり「In
the Last Resort」からの曲である。曲調としてはデイヴ・グルーシン&リー・リトナーを思わせるメロディー重視のミディアム・テンポ・ナンバーである。ツボを心得たドラムスと歌うベース・ソロが心地よい。
(写真:右上 和田アキラ、左上 木村万作)
ファースト・セット最後の曲は91年の「Rejuvenation」から「Ideogram」である。Tony McAlpineを思わせるハード・フュージョン・ナンバーだ。キメのリズム・フィルがスリリングな感じを上手く表しており、中盤では3人がお互いにシンコペートして絡み合うリズムを聞かせる。このあたりのリズムのタイトさは特筆に価する。また、スローな始まりから盛り上げて行くベース・ソロが秀逸である。ギター・ソロはコード弾きを随所に織り交ぜたテクニカルでありながら情熱を感じさせるもので、またバックのドラムスとベースと相俟って痛快なドライブ感を出している。そしてリズムをキープしながら徐々に積み上げるドラム・ソロはフランスの名プログレッシヴ・フュージョン・バンド「Gong」のドラマーだったPierre Moerlen(ピエール・モルラン)を思い出させる。バス・ドラムを駆使して叩き出すマシンガンの様なリズムの嵐は空恐ろしいほどまでにスリルに満ちたものだ。
インターミッションの後、セカンド・セットの一曲目はライトなウェスト・コースト・フュージョンとでも呼びたい「Morning Light」。77年のデビュー作「PRISM」からの選曲である。曲調のためか、ベース・ソロもL.A.を中心に活躍する人気ベーシスト、Abraham Laboriel(エイブラ八ム・ラボリエル)のような洒脱さを覗わせる。ギターの音はスタジオ盤よりもアグレッシヴな響きがあり、曲の輪郭をはっきりと浮かび上がらせるようだ。
ここでステージにゲストを迎える。一人目として最新作「[mju:]」に参加しているキーボーディスト石黒彰を加えて78年の「Second
Thought/Second Move」から「Spanish Soul」が演奏された。石黒彰は和田アキラ、永井敏己、菅沼孝三と結成した「W.I.N.S」や松下誠、富倉安生、宮崎全弘の「Paradigm
Shift」に参加している腕利きである。曲はそのタイトルどおりフラメンコ風なメロディーを取り入れたミディアム・テンポの曲で、エレクトリック・ピアノの軽快なソロがフィーチャーされる。情感的なギターソロのバックでアコースティック・ピアノに変えた石黒彰とドラムス、ベースが乗りの良いリズムを展開する。
(写真:右上 岡田治郎)
次も石黒彰を加えての編成で、曲は「Mju」から「つづれおり」である。この曲は今回のもう一人のゲスト、新澤健一郎の曲であるが、ライブの趣向としてお互いの曲を弾き合うという形をとっている。ベースのリフでリードするアップテンポな曲で、ギター、ベース、ドラムスで決めるリズム・ブレイクでのコンビネーション・プレイが小気味良い。石黒彰はアコースティック・ピアノでジャズ・フレーズを基調にした見事なソロを披露し、ソロ終盤のギターとの絡みではスリリングな展開を見せる。今日のサウンドチェックで初めて弾いた曲とは思えない出来映えである。テーマに戻った後、曲の終盤でのピアノとドラムスの乱れ打ちの絡みは凄みすら帯びていた。
次のゲストは「PRISM
Plus One」でサポートキーボーディストとして活動を共にする新澤健一郎である。曲は石黒彰の曲「Prime Directive」で、やはり「Mju」に収録されている。クランチーなギターの音が小気味良い、アップ・テンポなハード・フュージョン・ナンバーである。中盤のキーボード・ソロでは新澤健一郎のムーグ・シンセサイザー・ソロがヤン・ハマーを思わせるような少しブルージーなフレーズと速いパッセージを織り交ぜて駆け巡る。これはアナログ・シンセサイザー・ファンにはたまらない演奏だろう。ギターもロック魂にあふれたダイナミックなソロを展開する。スラップを交えたベースのバッキングがスピード感を加味して、ストレートにグルーヴするドラムスと相俟って抜群のドライブ感を出している。
(写真:右上 石黒彰、左上 新澤健一郎)
セカンド・セットの最後は80年の「Surprise」から「Karma」。ギターのアルペジオで始まる初期プリズムの代表曲であり、ファンの間で名曲として名高い曲である。アコースティック・ピアノをバックに泣きのギターがリードする前奏部からピアノ・ソロをフィーチャーした美しい中間部への流れが心地よい。流麗なピアノ・ソロの後はベース・ソロを配し、そしてセカンド・テーマを導入すると情熱的なギターソロへと移行する。ドラムスとベースがドライブをかけてゆき、ギターが駆け巡る。この展開は見事だ。そしてバス・ドラムの連打に引っ張られてハードに展開し大団円となる、圧巻の演奏である。
鳴り続くアンコールの拍手に応えてバンドがステージへ戻る。石黒彰と新澤健一郎の二人のキーボーディストを入れた5人編成で「Second
Thought/Second Move」からの大作「Beneath the Sea」が演奏された。ギターのアルペジオに導かれて始まり、バンドがオーケストレーションを導入した後ドラムスとベースのグルーヴにリードされてハードな展開に突入するあたりでは海中に深く潜航するかのような緊張感がみなぎる。その後は激しいギターソロの嵐だ。その嵐が過ぎると今度は二人のキーボーディストのバトルが展開される。新澤健一郎のエレガントさを感じさせるエレクトリック・ピアノ・ソロの後、新澤健一郎のムーグと石黒彰のコルグZ1が交互にフィーチャーされ、再び嵐のような激しい展開となる。ユニゾンで全員が弾くキメのフィルイン・フレーズは完璧といえるタイトさである。そしてギターソロをフィーチャーし、再び全員のユニゾンでテーマに戻る。続く石黒彰のソロでは足まで使ったダイナミックなプレイを見せるなど、最後まで信じがたいテンションで突き進む名演であった。
日本のフュージョン界をリードしてきた"つわもの達"は25年以上経った今でもパイオニア精神にあふれたアグレッシブな演奏を聴かせてくれた。耳あたりの良いムード音楽に堕したフュージョン・バンドが多い中、ライブの場でそこにしかない緊張と感動を与えてくれるプリズムの存在は大きい。次の四半世紀へ向けてさらに突き進む彼らの動向には今後とも要注目である。
Musicians:
和田アキラ
Akira Wada : Guitar
使用機材)
Saijo
Guitars /SAW-8 (http://www.saijo.info/index.html)
ROCK
TORON HUSH PEDAL, PROVIDENCE A/B BOX (Passive), HAO Rumble MOD.,
KORG A2 Multi
Effect Prfocessor, KORG A3 Multi Effect Prfocessor,KORG DTR-1 Digital Tuner
KORG
FC6 x 2, KORG XVP-10 EXP/VOL PEDAL, KORG EXP-2 EXP/VOL PEDAL
Hiughes&KettnerTriAmp MK-2,
Hiughes&KettnerCC212 x 2, Hiughes&KettnerEdition Tube x 2,
Fernandes
Stereo Power Amplifier, HIWATT Speaker Cabinet, Electroharmonics Juice Extracter
木村万作
Mansaku Kimura : Drums
使用機材)
Pearl
Carbonply Maple Series
Bass Drum:22"X18"
Toms: 16"X14",
14"X12", 12"X10", 10"X 8"
Snares: Ludwig LM402
14"X6.5", Pearl Soprano M1040 10"X4"
Cymbals
Sabian:
20"HH Medium Heavy Ride, 20"HH Chinese, 18"HHX Evolution O-Zone
Crash,
18"AA Medium Thin Crash, 16"AA Thin Crash, 14"AA Extra
Thin Crash, 14"HHX Groove Hats,
14"HH Regular Hats, 10"AA Splash
Paiste:
5"Cup Chime, 4"Cup Chime
Pearl Wind Chime
岡田治郎
Jiro Okada : Bass
使用機材)
Bass:フレッテッドベース BOSSA
OBJ / フレットレスベース
BOSSA OB
アンプ:Huges & Kettner Quantum
QC412
エフェクター:BOSS GT-6B
Guests:
石黒彰 Akira
Ishiguro : Keyboards
使用機材)
YAMAHA
Grand Piano C5(PIT INN), KORG Z1
新澤健一郎
Kenichiro Shinzawa : Keyboards
使用機材)
YAMAHA Grand Piano C5(PIT INN),
Moog PRODIGY, EDIROL PCR-50
YAMAHA
MOTIF-RACK w/PLG150-PF
MACKIE MS1202VLZ(ミキサー), BOSS VF-1(マルチエフェクター: Moog用),
KORG DTR-1(チューナー:アナログシンセ用), ETA PD9(電源モジュール)
<
Set List >
1st Set:
Maze
Firefly
Angry
Lady
Napoli
Ideogram
2nd Set:
Morning
Light
Spanish Soul
つづれおり
Prime Directive
Karma
Encore)
Beneath
the Sea
Report by Tatsuro Ueda
Photograpy by Chikako Ozawa
Edit
& Design by Asako Matsuzaka
Special Thanks to PIT INN Roppongi
六本木ピットインの想い出
※開演前、メンバーのみなさんに六本木ピットインの思い出を語っていただきました。
和田アキラ
PIT
INN(六本木)はPRISMデビューと同じ頃できたんです。PRISMとしては、デビュー当時から今までの、その全てのメンバーの組み合わせでやっています。いろんな思い出があって、Sea
Windが上のスタジオでレコーディングしていて、終ったあとに全員でPRISMを観に来たり、KEEPで出ているときはSTEPSのメンバーが来たり、あと、客席にチャック・レニーがいたり・・・。松岡直也&Wishing、WINSなど、大体のバンドはまず初めにここでやったし、W.I.N.S.のように、ここでやったセッションがきっかけで結成されたバンドもあって・・・とても一言では語りつくせないですね。ここで録ったライブが3枚くらいあって、記録として残っているのがとてもよかったと思っています。
デビューと同時ということもあるけれど、「ここで育った」という気がしていて、「一番の庭」みたいな感じですね。「庭」というか「家」と言えるようなときもあったしね(笑)。PRISMとしても、自分自身としても、共に歩んできたけれど、一つの時代が終ったような感じもします。いろいろな意味で感無量です。これを一つの良い意味でのバネにして、次の時代に向かっていきたいと思います。
木村万作
STEPS、The
24th Street Band、アラン・ホールズワースなど、昔はよく外タレのライブを観に来ていました。学生の頃から観に来ていて、そして自分がデビューして、「もうそんなに時がたってしまったんだなあ」と思っています。PIT
INN(六本木)には、もう「ず〜っと出てたな」という気がしますね。特にPRISMでは、PIT
INNがホームグランドという感じだったから、だから本当に「家がなくなっちゃう」ような感じですね。とにかく「いろんな人と一緒にやった」というのが思い出としてありますね。
なくなってしまうのは淋しいですが、これは次のステップへのきっかけかもしれないし、またどこかで新しい形で始まることを期待して、その時には僕らも力になりたいと思うし、いろいろお世話になった恩返しをしたいと思っています。その思いもこめて、今日は一生懸命に演奏します。
岡田治郎
僕の場合、パワーウェイブという竹中俊二さんのバンドで毎月出ていたのが最初だと思います。当時、「お客さんが2人しかいない」こともありましたが、それでも毎月出演させてもらって、とてもありがたいと思いましたし、いろんな意味で勉強になりました。アマチュア時代はもちろん、プロになってからもアラン・ホールスワースなど観に来ました。
いろいろなバンド、セッションで出演しましたが、やっぱりPRISMとしてライブができたのは嬉しかったです。PIT
INN(六本木)は僕にとっては落ち着いて音楽ができる場所でした。年間30〜40本、出ていたこともありますし、本当にお世話になりました。
新澤健一郎
駆け出しの頃からほんとうにお世話になりました。現在のNervio、PRISMをはじめ私の様々な音楽活動の源です。振り返れば、学友、平井景(ds)とのUrbanscapeに始まり、WYSIWYG、Glidephonic、Quiet
Leaves、サイドメンとしても須藤満FOMF2003、小池修バンド、赤松敏弘NextDoor、平山惠勇O-Hie、そして、数々のリクエストセッション、、、これがきっかけでPRISMや永井敏巳さん、須藤さん、大橋イサムさんなど大勢のミュージシャンと知り合い、成長することが出来ました。六本木PIT
INNは終わってしまいますが、そこで培われた音楽は、ずっとずっと生きて行くのだと思います。
石黒彰
初めて出演したのは鳥山雄二Zi-Spaceにいた時です。あれから数限りないセッションがここでありましたが、もうなくなってしまうかと思うと、やはり一抹の寂しさは残ります。ライブハウスの殿堂である六本木ピットインに出ることは、若かりし頃の自分にとって目標でもありましたし...六ピ最後のステージをPRISMと共に迎えることが出来たのも、大変名誉なことです。有終の美を飾れた?気分です。出来ればまた復活して欲しいですね。五本木PIT
INNとか(笑)。
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