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LIVE
REPORT
ZAO
5th
June, 2004 at Shibuya O-West
(旧 On Air West)
フランス最強のジャズロック・バンドの奇跡的来日。
初期マグマの変幻自在さとフレンチ・ジャズならではの耽美的メロディーの織り成す極上のミクスチャー・ミュージック。
ZAOの名を聴いてピンとくる人は結構な音楽通か、あるいは昔からのフレンチ・プログレッシブ・ロック・ファンであるに違いない。'70年のマグマのファーストアルバムに参加したキーボーディストのフランソワ・カエンと同年のセカンドで名を連ねたヨシュコ・セフェールを中心として結成されたZAOは'73年デビュー以来、既存の枠にとらわれない音楽のファンに大きな支持を受けつづけている。誤解なきように申し沿えておくと、70年台初期のマグマはロックの影響をとり入れた前衛的ジャズバンドとして活動していたのであり、そのメンバーが作ったZAOがジャズロックであることは必然的なのである。なお、ZAOには同じマグマ人脈から現代ジャズ・バイオリニストの第一人者であるディディエ・ロックウッドが'76年の「Kawana」より参加しているが、彼は時を同じくしてこの6月に東京で7年ぶりの公演を行なう。
(ディディエ・ロックウッド・ニュー・カルテッドも後日当ホームページにてレポート予定なのでご期待頂きたい。)
今回のライブにあたってはそのカエン-セフェールを中心に、'75年の「Shekina」以来活動を共にしているベーシストのジェラール・プレヴォーやピエール・モルレンズ・ゴングで活動していたドラマーのフランソワ・コース、そして新人ボーカリストとしてシンティア・サン・ヴィルを加えた5人編成に、さらに東京公演のゲストとして自身のバンドであるKBBやポチャカイテ・マルコといった海外でも評価の高いプログレッシブ・ロック・バンドとの活動で近年注目のバイオリニスト、壷井彰久を迎えた特別編成としている。
さていよいよZAOの登場である。皆それなりに齢を重ねた風貌であるが、演奏が始まるとその内側には熱い躍動感がみなぎっているのが伝わってくる。シンシアのスキャット・ヴォーカルに導かれて一曲目の「Marochesek」が始まると会場から大きな声援が沸き起こる。その日にリハーサルをしたばかりというエレクトリック・バイオリンの壷井彰久も上手く溶けこんでおり、ヴォーカルとセフェールのソプラノ・サックスとのユニゾンが心地よく響いてくる。ピアノがリズム隊と共に作り出す大きなリズムの中をメロディーがシンコペートしながら展開して行く様は確かに初期マグマの雰囲気を感じさせる。30年前の曲でありながら新たな息を吹き込まれて充分に新鮮である。
ヨシュコ・セフェール | シンティア・サン・ヴィル(左) ジェラール・プレヴォー(右) | 壷井彰久 |
続く「Ataturc」はアコースティック・ピアノのリードでソプラノ・サックスとヴォーカルのユニゾンのメロディーで始まる。中盤でピアノ、ベース、ドラムスのトリオで演奏する場面では全くのモダン・ジャズなのだが、ドラムスとベースのパワー全開さ加減がZAOらしい。
次の「Ronach」はパワーフュージョン的な始まりで叩きつけるように展開して行くが、中盤のフリーフォームな部分ではソプラノ・サックスとバイオリンの絡みが味わい深くなかなかの聴きどころであった。
「Atart」はデイヴ・ブルーベック風なピアノのリフで始まる曲だが、ソプラノ・サックスとヴォーカルのメロディーが入るといきなりテンションの高いフレンチ・ジャズ・ロックへと変貌する。
ピアノをメインにスローに始まる「ISIS」はZAOの5人だけで聴かせる。中盤からハードな盛り上がりを見せ、ピアノ・ソロをフィーチャーしながら目まぐるしく展開する。
ファーストセットの最後の曲は「Czardas」。セフェールの巧みな東欧風高速フレーズが小気味良い。続く壷井も負けじとワウ・ペダルを駆使したソロで応戦する。ピアノ、ドラムス、ベースのインプロヴィゼーション部では凄みのある展開を聴かせてくれた。
フランソワ・カエン | フランソワ・コース |
しばしのインターミッションを挟んで、セカンド・セットのオープニングはカエンのソロ・ピアノで始まる自然への賛歌、「Natura」である。タイトルどおり、小川のせせらぎを思わせる美しいピアノ・ソロがしばし続くのだが、ドラムスが入り、そしてベースが入ってくると、途端にヘヴィーな色彩が被さる。
次の「Sadie」はサン・ヴィルのヴォーカルをフィーチャーした曲で、彼女の透き通る歌声が響き渡る美しいスロー・チューンである。
ここで壷井彰久は一旦ステージを降り、5人編成で演奏するのは「Metatron」である。スキャット・ヴォーカルによる導入部に続いて反復するソプラノ・サックスの速いリフで始まる、キメの多い複雑な大曲だが一気に聴かせる。
次の「Cynthia」はシンティア・サン・ヴィルのために書かれた曲とのことだが、抑えた中にも清冽な響きのある、美しい曲である。
「Free-Folk」では壷井彰久を加えた6人編成にもどり、テーマのあと、ピアノ、ベース、ドラムスのトリオでテンションの高いインプロヴィゼーションを聴かせてくれる。後半部で徐々にスピードが上がってゆく様はスリリングだ。
会場の沸き返る声援に応えて6人がステージに戻る。アンコールは「Zohar」で、各パートのソロを大々的にフィーチャーした聴き応えたっぷりの演奏である。特にフランソワ・コースのパワフルなドラミングは圧倒的であった。
30年を経て再現されたZAOのステージであったが、その当時の姿を彷彿とさせて余りある躍動感に満ちたライブであったと言って良いだろう。久しぶりのバンドとしての演奏にゲストを加えた形であったので多少のアラは散見されたものの、当時を知る人にも噂を聞いて初めて聴く人にとっても充分に楽しめ、またフレンチ・ジャズの底力を垣間見ることの出来る良いチャンスであったと思う。
Musicians:
ヨシュコ・セフェール
/ Yochk'o Seffer:Saxophone(ex-MAGMA)
フランソワ・カエン / Francois "Faton"
Cahen:Keyboards(ex-MAGMA)
ジェラール・プレヴォー / Gerard Prevost:Bass(ZAO)
フランソワ・コース/
Francois Causse:Drums(ex-MAGMA/ex-P.M.GONG)
シンティア・サン・ヴィル / Cynthia Saint Ville:Vocal
Guest:
壷井彰久(Vln,
from KBB)
Opening Act: 大文字
ホッピー神山(Key)/吉田達也(Dr)/ナスノミツル(B)
Set
List:
1. Marochesek
2. Ataturc
3. Ronach
4. Atart
5. Isis
6.
Czardas
7. Natura
8. Sadie
9. Metatro
10. Cynthi
11. Free-Folk
(Seffer)
Encore)
Zohar
レポート:Tatsuro
Ueda
写真撮影:Yoko Ueda
取材強力:POSEIDON
Production, Shibuya
O-West
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