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LIVE
REPORT
エドガー・ウィンター
24th
June, 2004 at duo Music
Exchange
衰えを知らぬ声、振る舞い。そしてあの"小道具"も登場!
あれから14年。
筆者が観た、1990年のエドガー・ウィンター&リック・ディリンジャーとしての来日公演は素晴らしかった。その公演は商品化(CD、ビデオ、LD)されており、今でもよく見聞きしている。まず単純な事実として、今年で58歳というエドガー・ウィンターが現役であること、そして来日してくれるということがとても嬉しい。そして・・・素晴らしいパフォーマンスだったのだから言うことなしなのだ。
メンバーは、エドガー・ウィンター(ヴォーカル、キーボード、サックス)の他に3名。ドラムズのクリス・フレイジャー、ベースのマーク・メドウズ、ギターのダグ・ラパポート。フレイジャーは昨年の世良公則、今年7月にはTMG(松本孝弘グループ)といったハード・ロック畑で活躍している。メドウズもメレディス・ブルックスやジョニー"ギター"ワトスン(ステージ上で急死してしまった96年の来日公演)との来日経験を持っているそうだ。非常にバンドとしてまとまっていると感じたが、終演後にメドウズから聞いた話によると、このメンバーになってからもう2年ほど経つそうだ。「なるほど」と納得。なお、何曲かでシーケンサーが使用されており、コーラス、キーボード、パーカッションの音が加えられていたのを付記しておく。
ステージは90年と同じく「Keep
Playing That Rock 'N' Roll」で幕を開けた。サビで"思わず手が挙がったりする"観客のリアクションから、長年のファンが集っているのがわかる。その中の多くは14年前にも足を運んでいただろう。そして肝心のエドガー本人の実力が衰えていないことと言ったらもう! ・・・声、声域、歌いまわし(崩し方が魅力的なのだ)、トーク終了時に多用される太い声、そのどれもが往時のままといっても過言ではない。
続いては、「Lovelight」。ここでサックス・ソロ、続いてヴォーカルでのフェイクが披露される。さながら一人ソウル・リヴュー。ともすれば間延びしかねないソロ・パートをタイトに楽しそうにバックアップしている3人が頼もしい。特にフレイジャーの堅実なのにワイルドなドラミングは特筆に価するものだ。
「Nu
Orleans」「Texas」と、名前からして南部色のプンプンする曲が続き、その後を受けたのがラパポート単独でのギター・ソロ。いわゆるへヴィ・ロックが好きそうな風貌の彼が、ここぞとばかりに曲中では採用されなさそうな(笑)アクロバティックなプレイを披露していた。その間に、舞台中央にはエレクトリック・ピアノが運び込まれている。エドガー・ウィンターがこの日唯一、椅子に座り弾き語ったのは「Dying
to Live」。エミネムやジョニー・ラングがカヴァーして若い世代にも広まったというスロウ・ナンバーだ。時代・ジャンルを問わず、「素晴らしいスロウは祈るように歌われ、演奏される」と筆者は思っているのだが、この曲でもその思いをさらに強くした。それを証明するかのように、彼等はハード・タッチのゴスペルとでもいうべき「Show
Your Love」を続けて演ってくれた。この中にメドウズのベース・ソロが挟まれる。P−ファンクのブーツィ・コリンズを思わせる、派手だが重い、骨太のソロだった。
次はいよいよ「Free
Ride」だ。このイントロを聴いて胸躍らないファンはいないだろう。そして彼のライヴを知っている者はこの曲が始まるなりこう思うだろう。
「いよいよか?」「出るのか?」「まだ使っているのか?」
いよいよだった。出た。まだ使っていた。そう、"ショルダー・キーボード"!
まだショルダー・キーボードというものが無かったころ、ライヴでの見栄えを良くするために、キーボードにストラップを装着して、ギターさながらのパフォーマンスを見せるということを、誰が一番最初に行ったかはともかく、少なくともそれが大きな話題となった最初の数人にエドガー・ウィンターが含まれるのは間違いない。当時の、まだ大きく重いアナログ・シンセを無理やり引っ掛けているかのような彼のステージ写真を見ると、「優れた表現の多くはギャグにほど近い」の好例である事が確認出来る。余談になるが、彼の場合、多くのアルバム・カヴァーでもその謎の美的センス(笑)は知られているし、90年の「動くエドガー」初目撃で知った、キメ部分でのちょっとフニャッとしたポーズに代表されるステージ・アクションの歓迎すべきおかしさ(こちらも健在でした!)も併せて考えれば、普通の「格好良さ・悪さ」という基準をすでに逸脱していると筆者は考えている。
さて、そのショルダー・キーボード。当時より少し小ぶりになってはいるものの、「今ならもっともっと小さく軽いものがあるでしょ」、と突っ込みたくなる程充分に大きいシンセサイザー(Roland
JD8000)を、彼は弁当売りのごとく首に掛けた。つまり、まだショルダー用ではないものをわざわざ使っているのだ。「俺はこれでずっと行く」という男意気を感じた。そして音色も昔ながらの骨太なモノ・シンセ音。期待通りだ。
そしてそして、「Frankenstein」が遂に登場。ロックのインストゥルメンタル曲として数少ない全米No.
1獲得曲である。エドガー・ウィンターはショルダー・シンセ、サックスそしてパーカッションと縦横無尽にステージを歩きまわりその腕を披露していく。そして、最後に控えしソロは、といった感じでフレイジャーのドラム・ソロが登場。前述の通り、ここまでのステージを堅実かつワイルドに支えていた彼のソロは、ただの力任せでもなく、かといって頭でっかちな小技の披露でもない、その風貌通りの端正でパワフルな、鍛えられた男のソロだった。様々なスタイルをこなせる、しかしあくまでも、実に「ロック」なドラミングだった。今後の活躍が楽しみだ。この曲を最後に本編は終了。
もちろん拍手と歓声はバンドを呼び戻す。アンコールで演奏されたのは「Tobacco
Road」。初期のライヴ・アルバムでも長尺の演奏が披露されていたものだ。南部出身の同志とも言えるジ・オールマン・ブラザーズ・バンドとも共通する、ハイ・テンションなのにリラックスしたムードの漂うジャムが展開される。途中には、クリーム、レッド・ゼペリン(Led
Zeppelin :ゼペリンあるいはゼプリンが最も近い表記らしい)、ジミ・ヘンドリックス、スライ&ザ・ファミリー・ストーンらのフレーズが織り込まれていた。
さてこれで大団円かと思いきや、さにあらず。駄目押しのごとく続いて演奏されたのはジ・アイズリー・ブラザーズの「Shout」。R&R初期の作品らしいイキの良さ、色褪せない曲の良さ、そしてシンプル・イズ・ザ・ベストという曲構成(ほとんどひとつのパターンの音量を強弱させるだけで出来ている曲だ)を持つこの曲は、ヒットから45年経つ今、腑抜けた懐メロにならず新鮮な気持ちで演奏するのが逆に難しい曲かも知れない。彼等は、もちろんクリアしていた。
選曲も妥当なものといえだだろうが、「Dying
to Live」に代わったと言うことだろうか、今回はもう一つの名スロウ「Fly Away」が残念ながら演奏されなかった。まあそこまでねだるのは贅沢というものだろう。これは次回を期待して。
繰り返しになってしまうが、エドガー・ウィンターのシンガー/パフォーマーとしての現役度の高さには驚くべきものがあった。ギターとのかけあい、観客とのかけあいも素晴らしかった。メンバー3人のソロも含めて感じたのは、ウィンター・ファミリー(兄ジョニー・ウィンター、リック・ディリンジャー、故ダン・ハートマンほか)共通の、ジャンルの壁を超えた、R&R、ブルーズ、ソウル、ファンク、ゴスペルなどの要素を独自のものに昇華させたロックはまだ継承され、進化・深化しているということだ、そしてその独自性が当時から最も出ていたのがエドガー・ウィンターだったなあということ。それに、今さらながらに気づかされた、そんな今回の来日公演だった。
Members:
エドガー・ウィンター(Vo,
Key, Sax)
ダグ・ラパポート(Gt)
マーク・メドウズ(B)
クリス・フレイジャー(Dr)
Set
list
1. Keep Playing That Rock 'N' Roll
2. Lovelight
3. Nu Orleans
4.
Texas
5. Dying to Live
6. Show Your
Love
7. Free Ride
8. Frankenstein
Encore)
Tobacco
Road
Shout
レポート:Yoshiyuki
Hitomi
写真撮影:duo
Music Exchange
取材サポート、編集、デザイン:Asako Matsuzaka
取材協力:duo
Music Exchange
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