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LIVE REPORT

ディディエ・ロックウッド・ニュー・カルテット
23rd June 2004 at BLUE NOTE TOKYO


フレンチ・ジャズのトップを行くジャズ・バイオリンの第一人者が案内する、音楽でめぐる世界の旅。


ディディエ・ロックウッドはステファン・グラペリやジャン・リュック・ポンティと並んでジャズ・バイオリニストとして世界に名を知られる人だが、その作品を眺めてみると随分と幅広い活動をしているようである。70年代の始めに革新的なアプローチでジャズとロックを融合した壮大な音楽世界を創造し世界を魅了したマグマに参加し、その後その直系のジャズ・ロック・バンドであるZAOに加入。当時はロックよりのジャズ・ミュージシャンとして認識されていたようだが、77年のリーダー作「SURYA」は同時代のフュージョン作品としてトップクラスに位置する作品に仕上がっている。80年代にはよりストレートなジャズに傾倒するが、この時期に二人の辣腕ギタリスト、フィリップ・カテリンおよびクリスチャン・エスクデと共に作ったアルバム「TRIO」は非常に良質なジャズアルバムとして賞賛に値する作品である。90年代に入ってからはDIDIER LOCKWOOD GROUPとして再びロック色の強い演奏に戻ったものの、その後ソロ名義での活動に移ってからはまたジャズにフォーカスしたアルバムを発表しつづけている。

今回の来日はDIDIER LOCKWOOD NEW QUARTETとしての公演で、ステファン・ギヨーム(sax, flute)、べノワ・スリース(Org)、アンドレ・シャルリエー(Ds)と共に7年ぶりに日本のステージに上がる。なお、べノワ・スリースとアンドレ・シャルリエーは最近「GEMINI」というCDを発表しており、またステファン・ギヨームも参加している。

ステージに登場した4人。まずはディディエによるメンバー紹介と、今年で彼のデビュー30周年であるなど、客席との間合いを確かめるように英語で軽いおしゃべり。落ち着いたところで1曲目の「Birds in the Kitchen」。オルガニストのべノワによる曲で、導入部にアイルランドのジーグをとり入れたフレーズを使っている。アップテンポな曲でライブの間駆けにふさわしいといえよう。中盤のバイオリン・ソロではバロック調のメロディーをブルース仕立てにしたようなフレージングで、昔からのアグレッシヴなタッチは相変わらずである。ハモンド・オルガンもドラムスとのデュエットで弾きまくり会場を大いに沸かせる。途中にフィーチャーしたドラムソロでは意外とも思える激しさで会場を驚かせてくれた。

次は10年ほど前に他界した幼馴染みの女性に捧げられた曲「Nathalie in Paradise」。かすれがちな非常にゆっくりとしたボウイングで導入する、はかなげなメロディーが美しい。ソプラノ・サックスとバイオリンが呼び交わすような展開の後、ハーモニクスを使ったバイオリン・ソロが上空を舞う鳥の鳴く声のように響き、哀れを誘うかのようだ。

次の曲は一年前にエジプトを訪れた際に作った曲なのだそうだが、曲名が決まらず、一年間考えた末、月並みながら「Pyramides」と決めたとのこと。マイルス・デイヴィスへのトリビュートだという。ディディエは途中でバイオリンを置いてアンプの後ろへしゃがみ込んで何をするのかと思うと、ミュート・トランペットを吹きながら出てきて会場を驚かせた。もともとエレクトリック・サックスなどを演奏することは知っている人も多かったと思うのだが、ステファンのソプラノ・サックスとの掛け合いでマイルス風のトランペットを聴かせてくれるとは嬉しい驚きであった。ステファンはその後テナー・サックスに持ち替えてソロをとったのだが、テンダーな出だしからファンキーな流れへと上手く持ち上げて行く腕前にはシャッポを脱がねばなるまい。また、このソロをサポートするべノワとアンドレのバッキングが実に上手く、バンドとしての力を充分に見せつけてくれた。

次は飛行機に乗って上空から雲を見下ろす気持ちで作ったという「Au dela des Nuages」。静かなオルガン・ソロから始まり、バイオリンとのデュエット、そしてステファンのスキャット・ヴォーカルが入ると、まさに雲の上を行くような浮遊感と静けさを感じさせる。続けて演奏される次の「Somewhere at East」のブリッジとしてディディエのバイオリン・カデンツァが披露される。パガニーニを思わせるクラシカルな展開とピチカートを交えた技巧的な演奏で大きな見せ場となった。ソロは次第に東ヨーロッパ的な色彩を加えて行き、チャルダーシュ(ハンガリーの舞踊曲)と言った趣きの9拍子のスリリングな展開を見せる。曲名の「東方のどこか」というのはやはりハンガリーやルーマニア、ロシアあたりをイメージしたものと見える。ステファンの奏でる小アジア的フレーズのフルートが良い味を出している。そして後半部のバイオリン・ソロはディディエらしいハード・フュージョンの弾きまくりソロで、がっちりとかみ合ったドラムスとのコンビネーションと相俟って鬼気迫るがごとき演奏に会場は大興奮である。そのドラムスのソロもまたメロディーを感じさせる秀逸なもので、アンドレの非凡さをよく現したものであった。

ここでディディエ以外のメンバーはステージを降り、ディディエのエレクトリック・バイオリンによるソロ、「Globe Trotter」が演奏された。これはリズムやメロディーで世界各地の音色を再現するというもので、ZETAと思しきスケルトンのエレクトリック・バイオリンでループなどのエフェクターによってリフを重ねて行き、その上にメロディーを乗せてゆく手法である。まずはスペイン風メロディーから導入し、そして今度はピッチ・シフターで低音を作った上にボディを弓で叩いてパーカッションを作り、インド、中近東、そしてシャンソン風の情感的なメロディーを弾き連ねて行く。すると今度はバイオリンのブリッジ部分を弓でこすって打ち寄せる波の音を作り、また高音部でカモメの鳴き声、そして低音で船の汽笛と、浜辺の情景を作り出して見せる。余談だが同じフランス出身の7人のベーシストで結成されたL'ORCHESTRE DE CONTRABASSESの傑作「Les Cargos」に収められている「Weekend a Deauville(ドーヴィルの週末)」という曲でも同じような手法でサウンド・スケッチが演奏されている。ご興味のある方は聴いてみていただきたい。さて24分に及ぶソロはまだまだ続いてゆき、ヴィヴァルディー風のメロディーを織り交ぜながら会場へ降りて行き、観客の周りをぐるりと一回りし、さらには客席テーブルを回るサービス精神も見せてくれた。まさに「Globe Trotter(世界を駆け回る人)」である。

湧き上がる歓声の中、他のメンバーがステージへ戻るが、実はここから先はアンコールナンバーである。一曲目はサンバ風のアップテンポな楽しい曲でタイトルは「Spopondrilloches」。スポポンドリヨッシュというナンセンスな言葉のとおり、全員がユニゾンで楽しげなフレーズを繰り返し、そして徐々に速くなるというシンプルかつエキサイティングな曲である。

最後はファンキーな「Onze tetes de Turcs」。ブルーベックの「Blue Rondo a la Turc」を思わせるタイトルだが、そのとおりBlue Rondoをファンキーにしたような印象である。ステファンはテナー・サックスで図太い音を響かせ、そしてべノワのオルガン・ソロが駆け巡るが、このオルガンは実はベース・ペダルで様々なスタイルのベースをとりつづけており、なかなかの達人ぶりを覗わせる。続いてサックス・ソロではマイケル・ブレッカーばりの熱いソロを聴かせてくれた。さらにディディエのエレクトリック・バイオリン・ソロではワウワウを使った弾きまくりソロで、途中にハチャトゥリアンの「剣の舞」のフレーズを交えて盛り上げてくれた。またバイオリン、オルガン、サックスの掛け合い部分ではユーモアたっぷりの演奏で、「ピンク・パンサーのテーマ」や「Blue Rondo a la Turc」を引用し、会場を沸かせてくれた。

東京での3日間の最終セットという思いもあってか、通常のセットよりも長い1時間40分にわたって会場を大いに沸かせてくれたディディエ・ロックウッド・ニュー・カルテット。卓越した技術と人間味あふれるステージ・パフォーマンスでライブの醍醐味を充分に味わわせてくれた。最後の一言、「See you as soon as possible!(また出来るだけ早く会いましょう)」という言葉が現実のものとなるよう願うばかりである。

Members:
ディディエ・ロックウッド / Didier Lockwood : Acoustic Violin, Electric Violin, Trumpet
ステファン・ギヨーム / Stephane Guillaume: Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, Flutes, Vocal
べノワ・スリース / Benoit Sourisse: Hammond Organ
アンドレ・シャルリエー / Andre Charlier: Drums

Set List:
1. Birsds in the Kitchen
2. Nathalie in Paradise
3. Pyramides
4. Au dela des Nuages
5. Somewhere at East
6. Globe Trotter
7. Spopondrilloches

Encore:
Onze Tetes de Turcs

Report by Tatsuro Ueda
Many Thanks To
BLUE NOTE TOKYO

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