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LIVE
REPORT
大高清美Group
Tour 2004 featuring Gary Willis
19th
April, 2004 Bluse
Alley Japan
新世代ジャズ・オルガンの旗手がリズムマスター達と仕掛けるグルーヴとハーモニーの大冒険
大高清美
& Gary Willis ミニインタビュー
今日のライブの主役、大高清美は見た目にはジャズ・オルガニストというよりはポップス系のヴォーカリストという印象である。しかしその小柄な姿からは想像もできない攻撃的な演奏で名だたるリズムマスターたちと渡り合い、火花を散らして満員の会場を沸かせてくれるのであるから、これが楽しいといわずしてなにを楽しいといおうか。
オルガニスト大高清美はこれまでに5枚のアルバムをリリースしているが、そのいずれもが玄人好みのする共演者とのリーダー作であり、また個性的な曲作りでオルガンの可能性を追求してきた意欲作である。今回のライブではその中から、今回のツアーのメンバーでもある、トライバル・テックの凄腕ベーシスト・ゲイリー・ウィリスと、そしてチック・コリア・エレクトリック・バンドのメンバーとして知られるデイヴ・ウェクルとの共演作、「Out of Sight」からの楽曲を中心にスリリングな演奏を展開してくれた。
ドラムスには松任谷由美、椎名林檎、クライズラー&カンパニーといったポピュラー・アーティストから世界的に勇名を馳せる超絶的プログレッシヴ・ロック・バンド、ケンソーにいたるまでの幅広い活動でいまや日本を代表するリズムメイカーとして知られる村石雅行を迎え、そしてギターにはこれも技巧派フュージョン・バンドとしてその名を轟かせるフラジャイルのリーダーであり、また多くのソロ作や「TV Jazz」に代表される「企画ものジャズ」のクリエイターとしても知られる矢掘孝一を加えた、これ以上ないほどの強力なメンバーである。
噛み付きそうなファズオルガンのブロックコードから始まる一曲目は「Out of Sight」のオープニングトラックでもある「#26」。村石雅行、ゲイリー・ウィリスとのトリオで演奏されるハードなナンバーである。フレットレス・ベースがずっしりとしたグルーヴを作りだし、ドラムスが細かく刻んでくる。大高清美のソロが小気味良いフレーズでソロをとるとベース、ドラムスが間髪を入れずにスピード感あふれるリズムでたたみ掛けてくる豪快なオープニングナンバーである。
ベースのリフで始まる「Commodore Funk」。ドラムスの細かいシンバルワークがさえを見せる。このあたり村石雅行らしい刻み方でにやりとさせられる。中盤で短いドラムソロをフィーチャーするが、「村石"男気"ドラミング」の真骨頂というべきグルーヴと小技の両立した豪快なソロである。続くオルガンソロもアグレッシヴに飛ばしてくれる。これもやはり大高清美の独壇場たる切れと乗りの良さを見せて余りある痛快さである。ベースソロではハーモニクスを巧みに使った出だしから、ゲイリー・ウィリスのトレードマークともいうべき骨太な音に小技を織り交ぜたフレージングが繰り出される好演を聴かせてくれた。
メンバー紹介の後、村石雅行がステージを降り、ゲイリー・ウィリスとのデュオで静かに始まる「 Like a Sandglass」。オルガンのイントロに続いてベースがメロディを奏でる。ややブルージーな曲調にのせてオルガンとベースが会話するようにソロパートを交代でつないで行く。少し引きずったようなオルガンのフレーズがけだるい感じを醸し出している。
会場の声援に迎えられて村石雅行がステージへ戻り、そして矢堀孝一が登場する。トライバル・テックの曲でゲイリー・ウィリスの作品である「Nite Club」が演奏された。矢掘孝一のギターが軽いリフの導入部から入り、そして次第に熱を持って発展してゆくのが楽しい。曲の中盤に差し掛かるとテクニシャン矢堀孝一の独壇場である。続くオルガンソロではローランド特有のDビーム・コントローラーを使ったピッチ・シフトを交えて表情豊かに弾きまくる。こういったトリッキーな奏法はともするとあざとい格好になりがちだが、大高清美のプレイは実にセンスが良い。テンションの高い演奏で会場も興奮を隠せない。
そしてファーストセット最後の曲は「The Big Wave」(G. Willis作曲)!トライバル・テックファンなら泣いて喜ぶこの曲を聴くことができたのは幸運というほかない。これもDビーム・コントローラーを使ったサウンドエフェクトで導入し、それに被せてドラムス、次いでベースが入ってくるイントロダクションはすばらしくスリリングだ。一転してフリーフォームなソロパートへと移行してゆくと、村石・ウィリスのグルーヴ・マスター・コンビに矢堀孝一のギターが縦横に駆け巡る。ギターの疾走感とオルガンの流れるようなバッキングが曲に見事なテンションを与えている。ドラムスとベースのリズムは千変万化する万華鏡のようだ。決めのリズムチェンジも痛快に決め、そして雄弁なベースソロへ。レガートなフレーズと細かいスケールを織り交ぜてのソロは舞い踊るかのように華麗でしかも即興とは思えないほど巧みに構成されている。続くドラムソロは村石雅行特有の繊細かつスピード感のあるシンバルワークから豪快な乱打まで、凄まじいまでの迫力である。再びギターのリフへ戻り、大きな興奮の中エンディングへと一気になだれ込む。
しばしのインターミッションのあと、セカンドセットは村石雅行とのデュオで幕を開ける。教会のパイプオルガンの音場を電子オルガンで再現した「Reverb」だが、スタジオ録音では遠くにかすかに聞こえるドラムスがここでは前面に出て曲をハードに盛り上げている。叩きまくるドラムスと静かに盛り上げるオルガンとの対比が面白い。中盤以降では全盛期のEL&Pを彷彿とさせるプログレッシヴな味わいを見せる。
続いてデュオで演奏されたのが、アルバム「Paragraph」でデイヴ・ウェクルと演奏した「Kid's Doors」。オルガンの音、フレーズともにキース・エマーソンを思わせるアグレッシヴな感じだが、中盤のソロではドイツのバンド、トリウムフィラートの名キーボーディスト、ユルゲン・フリッツのようでもある。左手でベースラインを弾きながら右手でジャズ・フレーズを繰り出す様は2人でEL&Pを再現しているようだ。爆発的エネルギー感に満ちた好演奏である。
ここで再びギター、ベースを加えた四人編成となり、アルバム「Out of Sight」から「Bugs」が演奏された。虫の声を模したようなユーモラスなベースソロから始まり、これも虫が鳴くようなオルガンの音が入る。ドラムス、ギターが徐々に入ってくるとベースのグルーヴがぐいぐいと引っ張り出す。オルガンが奏でるテーマは無調音階的でありながらどこかユーモラスである。ドラムスとベースがタイトにリフを刻む上を大高清美のオルガンが駆け巡る。曲の中にかなりのダイナミクスが盛り込まれており、ライブの醍醐味を感じさせてくれる演奏である。ギターソロはフリーフォームな味わいながらクールな印象で始まるが、次第に熱くなってゆくと大フュージョン大会へと発展する。ここでのオルガンのバッキングは上手く音の広がりを加えており、やはりセンスの良さを感じさせる。ゲイリー・ウィリスはベースのブリッジ近くを親指の爪で引っ掻くことでモデュレーターを通したかのような音を出して会場を驚かせたが、4弦のハーモニクスを交えたトリッキーなプレイの数々にそのテクニシャンぶりを充分に発揮し、会場を大いに沸かせてくれた。
次の「Departure」はオルガンの強大なコードで引っ張るパワー・フュージョンで、厚みのあるオルガン・サウンドを前面に出した爽快なバンドサウンドを聴かせる。中盤の大高清美のソロは緩急をつけながらもスピード感を失わないグルーヴィーな好演であり、ドラムスのアクセントとともに小気味良く決まっている。続くドラムソロは村石雅行としては珍しくタム主体の重量感あふれるもので、アタックの強弱で音程を変えるなど技の見せどころである。ライドでの繊細なシンバルワークはスティーヴ・スミスも裸足で逃げ出そうかという上手さである。リズムチェンジを繰り返しながらもスピード感を保ちつづける入魂のドラムソロであった。
アンコールはやはり「Out of Sight」から「Central Junction」、ファンキーなパワーチューンである。全員のエネルギーが一度に爆発したかのような出だしから、バンドメンバーそれぞれがポリリズムを奏でるかのようなアンサンブルへと進み、そしてゲイリー・ウィリスの巧みなベース・ソロをフィーチャーしてゆく。矢堀孝一の弾きまくるギターソロは痛快だ。大高清美の流麗なオルガン・ソロも心地よい。村石雅行が豪快なグルーヴをたたき出す中、再びギターソロへと移り、そして爽快なエンディングへとなだれ込む様はまさにカタストロフィーというべきであろう。
4日間の全国ツアーのラストステージとあってか、これ以上ないほどにタイトなまとまりであり、また村石・ウィリスの豪快なグルーヴに乗せるオルガンとギターの疾走感がたまらなく気持ち良い絶妙な演奏を堪能した一夜であった。このメンバーでの海外進出も期待したいところである。
Musicians:
大高清美(Organ) 使用機材:
Roland VK -88 / Hammond Leslie 2121
ゲイリー・ウィリス(Bass) 使用機材:
Ibanez Gary Willis Signature Bass
村石雅行(Drums)
使用機材:
パールマスターワークス特注セット(20x16BD, 12x8&13x9TT,
14x14&16x16FT, 13x6&5SD, 18Ride, 17Rocktagon, 16China, 10chinasplash)
Guest:
矢堀孝一(Guitar) 使用機材:
Deviser "Blue-3", Shur SH022, CAJ
AMP RIG, Kagetsu-Rock TS-9CRYO, TECH21 TRI-OD, YAMAHA PG-1
Set
List:1st Set:
1.#26
2.Commodore Funk
3.Like a Sandglass
4.Nite
Club
5.The Big Wave
2nd Set:
1. Reverb
2.Kid's Doors
3.Bugs
4.Departure
Enc)
Central
Junction
レポート:Tatsuro Ueda
写真撮影:Asako Matsuzaka
編集、デザイン:Asako
Matsuzaka
取材協力:Bluse
Alley Japan
大高清美
& Gary Willis ミニインタビュー.
※開演前にお話をうかがいました。
Q:今回のツアーの感触はいかがですか?
大高: 最高です!ゲイリーのグルーヴによってバンドが生き生きして、本当に素晴らしいサウンドになっています。共演できてすごく嬉しいです。
Q: 3rdアルバムでGaryさんとの共演を希望されたのはなぜですか?
大高: トライバルテックやNAMM Show(アメリカで毎年開催される音楽関連製品見本市)などの演奏を聴いていたのですが、グルーヴ感、音色・・全てがすごく好きだったので、やっぱりGaryしかいない、と思ってお願いしました。
Q: ゲイリーさんからみて、大高さんはどのようなオルガニストですか?
Gary: 私はオルガンのサウンドがずっと好きで、自分で書く曲の中にもオルガンを使ったものがあります。私の曲の「ナイトクラブ」を今日演奏しますが、これにもオルガンの音を入れたいと思っていたんです。大高さんのサウンドは大好きです!
大高:Thank
you!
Q: 今回はB3を使われないんですね?
大高:
やっぱり自分の楽器の音が好きだということ、それと今の時代、B3に限らずいろいろなコンボオルガンが出てきています。B3だけがオルガンサウンドということではなく、これからもいろいろなオルガンが出てきてほしいと思っています。私の場合、私の好きなオルガンサウンドを出せる一番の楽器、という意味で自分の楽器を使っています。
Q: 今日はローランド VKですね。今日のオルガンサウンドが楽しみです。 ところでゲイリーさん、他のメンバー、バンドへの印象などを聞かせていただけますか?
G: 楽しくやっています。夜な夜な即興で演奏するという、まさにジャズの世界ですね。同じ曲でもある晩の演奏は次の晩では違っているという。グループで演奏するというのはいつも楽しいものです。
Q: ゲイリーさんは何回か来日されていますが、今回のツアーでのオーディエンスの反応などはどうですか?
Gary: オーディエンスの熱気が伝わってきて凄くよかった!
大高: 今回、(ブルースアレイ以外は)ロック系で比較的こじんまりしたライブハウスをチョイスしたんです。昨日も立ち見で沢山のお客さんに来ていただいたのですが、みんなゲイリーの凄さにビックリしていたようです。
ゲイリーに弾いてもらうことで私の曲が違う印象になって、自分でも弾いていて楽しいし、回りも楽しくなってバンドの演奏も素晴らしくなるから、すごい相乗効果がでています。それをお客さんも見ていて喜んでくれています。
Q:
いよいよ開演ですね。今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
インタビュー:Asako
Matsuzaka
通訳:Tatsuro Ueda
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