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LIVE REPORT

The Isley Brothers
2nd Set, 1st March 2004 at BLUE NOTE TOKYO


今なお若いファンを増やし続けるソウル界の大御所にして現役ヒット・グループ、
ジ・アイズリー・ブラザーズ、大所帯で余裕の公演


The Isley Brothersの来日は1990年、98年、2001年に続き、今回で4度目となる。回を重ねる毎に若いファン層(クラブDJ近辺やR.ケリーのファンが中心)からの関心を集めており、その人気は高まる一方だ。今回も最近十年以内に彼等を知ったであろうと思われる年齢層が多いように感じた。デビューから45年以上のキャリアを持つミュージシャンとしては異例・特別な客層と言えるだろう。ブルーノート東京での公演は今回が初めてとなる。

幕開けからいきなり「Between the Sheets」だ。彼等のメロウ/セクシー/エロティック・サイドを代表する、この実に濃厚なラヴ・ソングはしかし、序盤に演奏されることが意外と多い。そうだとわかっていても「そんな、この段階でもう演っちゃうの?」という思いに毎回駆られる意表を突く構成だ。早くもロナルド・アイズリーの艶・力強さ・優しさに溢れた美声が惜しみなく披露される。

続いてもスローナンバー「Footsteps in the Dark」。ギターがあの印象的な冒頭のフレイズを弾くだけで会場は大喝采である。50年代からキャリアをスタートさせているヴォーカル・グループが70年代になってもスタイルを変え続け、当時でも既にベテランの域であったにも関わらず、ルーツ不明(混ぜ方が上手いということなのだろう)の曲調・リズム・音創りで、全く独自の音楽を生み出していた彼等のユニークさに改めて思いを馳せる。次にファンク・サイドを代表する大ヒット曲「That Lady」と「It's Your Thing」の2曲が登場。アーニー・アイズリーのファンキーなギター・プレイにスポットが当てられる。「It's Your Thing」の途中にジェイムズ・ブラウン作品の一節が織り込まれた。

「62年の曲を」というMCに続いて演奏されたのはご存知「Twist and Shout」。曲中に「ダンス天国」の有名な掛け合い、♪ナーナナナナー♪が挿入される。バックアップ・メンバー、ディーラヴァンス(キーボード)が舞台中央で披露するダンスも楽しい。ちなみに彼はソロとしてエピックよりアルバムを出している。ここから仲入りとなり、彼が歌い踊るザ・ジャクソンズ(マイケル・ジャクソン)と、バック・コーラスを務める女性2人、JS(ジョンソン・シスターズ)の持ち歌が続いた。ロナルドはそれらを舞台上の下手奥から嬉しそうに眺めている(彼女たちのアルバムはロナルドのバックアップを得て昨年リリースされた)。バック・バンドはこの3人以外に6人、他に要所要所で登場する女性ダンサーが1人、つまり出演者は総勢12人という大所帯である。

ロナルドが再び中央へ。スローなリズムに乗せてシンセサイザーが奏でるこのイントロのメロディーは、そう「For the Love of You」だ。客も一緒にサビを歌う。いい光景だ。続いて気絶するほど美しい「Make Me Say It Again Girl」へ。この浮遊感と高揚感と幸福感を一度に与えられたかのような不思議な感覚は一体何なのだろうか。何故か救われたような気さえしてしまうこの曲の魅力は一体何に由来しているのだろうか。こんな名曲ばかりを彼等は15年もの間、毎年発表していたのだ。今さらながらに、あれは奇跡だったのだと思ってしまう。

次は彼等の初ヒット「Shout」。教会仕込みのコール&リスポンスが展開される。当時まだ十代だったロナルド。60代になった今もなお、同じキー・同じ迫力でこの曲を歌える彼には全く感服してしまう(ロナルドはこの五月で63歳になる。アーニーは来日中の7日に53歳になった)。続く「Groove with You」。本国ではダンス・フロアで即座にチーク・ダンスが始まる曲だ。

続く2曲「Voyage to Atlantis」「Summer Breeze」の主役はアーニーだ。ジミ・ヘンドリックス(彼はデビュー前にThe Isleysのバック・メンバーだった事がある)が始めたと言えるであろう背弾きや歯弾きは、きっとその場の勢いや気分で行われたのだろうが、アーニーはそれらを予定に組み込んだ演出として受け継いでいる。前回、前々回同様に、歯で着実に馴染みのメロディを奏で、繊細なハーモニクスを着実にこなす。彼の「芸」として、モノにしてから早や30年、といったところであろうか。我々もそれに「待ってましたッ」とばかりに拍手喝采を贈る。主役の座を弟に譲り、ロナルドは「Summer Breeze」の途中で一時舞台を降りた。

その至福の時が終わった。アーニーとバンドはこれまたカッコいい「Work to Do」を演奏し始め、再びロナルドを迎える。ショーもいよいよ終盤である。次は前作『イターナル』からの「Contagious」。このショーで演奏された唯一の近作であった。最も優秀な後輩の一人であり現在は片腕とも言えるR.ケリーが手掛けたヒット曲だ。プロモーション・ヴィディオで扮しているギャングのボス(?)「ミスター・ビッグズ」として振舞う寸劇が再現される。ディーラヴァンス扮する若者と恋人を取り合うというストーリーに、「あ、あのPVと同じだ」とそれを知る者は騒ぎ、知らぬ者は「いい歳してようやるわ、でも羨ましいなァ」とこれまた騒ぎ(笑)、客席は大いに沸く。

そしていよいよ最後を飾るのは、75年に発表されたハード・ファンクの名曲「Fight the Power」だ。間にはSly & The Family Stoneの有名なフレイズも挿入され、観客とバンドの間で「権力と戦え!」「もっとハイに!」といった攻撃的且つ前向きなコール&リスポンスが続いた。そしてこれでもかこれでもかのクドいエンディング(これが無いとファンクやハード・ロックはつまらないのだ!)を最後に彼等は舞台を後にした。

実はこの日、ロナルドの喉の調子は絶好調とは言い難いように感じられた 。特にファルセトー・ヴォイスのコントロールに難が有ったと思う。が、それは単に時差ボケが残っていたから、前日との寒暖の差が激しかったから、そして2回公演初日の2回目だから、という一時の体調のせいだと思いたい。個人的に4日後の金曜日にも再び足を運ぶ予定をしていることもあり、祈るような気持ちでそう思いたい。

また、いわゆる「グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」なのに、バンドに勢いがある理由は何と言っても「新作CDが売れている」から、つまり懐メロ・バンドになっていないからだろう。近作3枚はどれもヒットし、昨年の最新盤『ボディ・キス』に至っては全米第一位に輝いている。何とこれは彼等にとって初の快挙だ。45年を超える輝かしいキャリアを持っていてなお今も上り調子、そんなベテラン・グループを少なくとも私は他に知らない。そして、そんな時のライヴはその勢いがあるので良いに決まっている。

とは言え、彼等のショーは基本的に93年発表のライヴ・アルバム『ライヴ!』の流れを基本にして、これにそれ以降の新曲を織り交ぜるスタイルでここ十年は定着している。最近3回の来日公演を観る限り、構成や演出に大差は無いと言ってしまえば確かにその通りだろう。いわゆる「お約束」の世界だ。そう書くと「ワン・パターン」などという非難の声が聞こえてきそうだが、むしろ十年前と同じ歌・演奏が今も可能なのは凄いことだと考えるべきだろう。出来上がった「型」を崩さず風化させずに続ける、これもかなり難しい作業なのではないだろうか。という訳で今回のライヴの追体験にはその『ライヴ!』をどうぞ。多分次回の予習にもなるはずだ。

そう、「次回」。気が早いのは承知しているがそれを心して待ちたい。

最後にメンバーの変遷を。1957年のデビュー時はオーケリー、ルドルフ、ロナルドのアイズリー3兄弟からなるヴォーカル・グループだった。69年より準メンバー扱いで弟のアーニー(ドラムズ、ギター)、マーヴィン(ベイス)、従兄弟のクリス・ジャスパー(キーボード)が参加し、73年のアルバム『3+3』より、そのタイトルが示す通り正式メンバーとなり、曲作りやプロデュースそして演奏も6人で全てこなす様になった。この「3 + 3 Only」(と誇らしげに明記されている)時代を全盛期とする方が多いだろう(もちろん私もその一人だ)。しかし83年の『ビトウィーン・ザ・シーツ(邦題「シルクの似合う夜」)』を最後に若い3人が「Isley Jasper Isley」として独立し、グループは再び元の3人組に戻るも、86年にオーケリーが亡くなり、次いでルドルフもゴスペルの世界へと戻ったので、89年以降は実質的にはロナルドのソロという状態に。名にも「フィーチャリング・ロナルド・アイズリー」が加わる。一方その数年間に、独立したアイズリー・ジャスパー・アイズリーは3枚のアルバムをコンスタントにリリースし解散、クリス・ジャスパーとアーニーはソロへと転じる。残るマーヴィンは再びロナルドと行動を共にするようになり(この時期に初来日)、次いでアーニーも合流、ファンは喜んだ。その後マーヴィンが糖尿病の悪化からグループを脱退しているので、現在のメンバーはロナルドとアーニーである(2度目以降はこの2人での来日)。前作より、上記の「ミスター・ビッグズ」が更にグループ名に連なり、現在の正式名称は「The Isley Brothers featuring Ronald Isley aka Mr. Biggs」というファン/業界泣かせの長いものとなっている("aka" はas known asつまり「またの名を」の意味)。

メンバーは減ってしまったが、不幸中の幸いなのはその残った2人というのが70年代の二枚看板だったリード・ヴォーカリストとギターリストである、ということであろう。

Members:
Ronald Isley(Vo),
Ernie Isley(G), Eric Walls(G), Zachary Scott(B), Jarod Barnes(Drs), Greg Seay(Per), Roman Johnson(Key, Musical director), D'LaVance( Key, Vo), Clarence Ross(Sax), JS - Kandy Johnson & Kim Johnson(Back Vo), Aurorah Allain(Dancer)


<Set List>

1. Between the Sheets (83)
2. Footsteps in the Dark (77)
3. That Lady (73)
4. It's Your Thing (69)
- includes: I Don't Want Nobody to Give Me Nothing Open Up the Door, I'll Get It Myself
5. Twist and Shout (62)
- includes: Land of 1,000 Dances
6. Shake Your Body (Down to the Ground) (79) /sung by D'LaVance
7. Ice Cream (2003) /sung by JS
8. For the Love of You (75)
9. Make Me Say It Again Girl (75)
10. Shout (60)
- includes: Doing It to Death
11. Groove with You (78)
12. Voyage to Atlantis (77)
13. Summer Breeze (73)
14. Work to Do (72)
15. Contagious (2001)
16. Fight the Power (75)
- includes: I Want to Take You Higher

Report by Yoshiyuki Hitomi
Many Thanks to
BLUE NOTE TOKYO


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