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LIVE REPORT


VALIS ラストライブ 〜VALIS 18年の歴史をここに閉じる〜

21 June 2003 at Bluse Alley Japan



18年間の活動に終止符を打つ記念すべきライブ
オリジナル・メンバーをゲストに迎えて繰り広げる最後にして最も豪華な音楽の饗宴








布川俊樹がガットギターで奏でる"Green Mist〜America"で幕を開けるステージ。ラルフ・タウナーを思わせるクラシカルなバラードが隅々までファンで埋めつくされた会場に降り注ぎ、小池修のサックスがさらに色彩を加えてゆく。

エレクトリック・ギターに持ち替えてミディアム・テンポのフュージョン・チューン"Beat Panic"へ。木村万作のドラムスとカルロス菅野のパーカッションが入り組んだリズムを作ってゆき、納浩一のベースが快いドライヴ感を出している。古川初穂のエレクトリック・ピアノが良い味わいを出している。ギターソロのフレーズからリー・リトナーの顔が見え隠れするようだ。

ファンキーなリズムに乗せて小池修のソプラノ・サックスとギターがユニゾンでリードする"Silent Wall"。ここでも若き日のリトナーを思わせるようなセンシティヴなギターソロが展開される。続くシンセサイザーとサックスの絡みはよく練られた印象を受けるが、これは長年続いたバンドの「息」というものだろう。そして再びギターソロへ。今度は連綿と続く息の長いソロで、スタイル的にはラリー・カールトンを想起させるが、フレージングはむしろパット・メセニーに近い。終盤でのサックスとのハーモナイゼーションが心地よい。

MCに続く"Hieroglyph"はドライヴ感のあるロック・フュージョン。ワウワウ・ペダルを使ったギターとテナー・サックス、そして少しファズをかけたエレクトリック・ピアノが小気味良いフレージングを叩き出し、そしてカルロス菅野のパーカッションがラテンの熱を吹きこむ。ドラム・ソロはバディ・リッチを思わせる豪快な叩きっぷりである。


ここでゲストの藤陵雅裕が登場。客席後方からサックスを吹きながら現れ、徐々にステージへと向かう。
"Parrot Cops Coming Soon"は2ビートで展開するリラックスしたジャム・セッションである。

古川 初穂(Keyboards)納 浩一(Bass)
布川 俊樹(Guitar)



次の"Banana Land"ではアップ・テンポになり、藤陵雅裕のソプラノ・サックスがワウワウ・エフェクトをかけた音と生音をミックスして響く。1本のホーンだが、シンセサイザーとのユニゾンのように聴こえるのが面白い。そして軽くコーラスをかけてホーン・アンサンブル的な音まで出してくる。曲の展開に合わせて音を変える芸の細かさは楽しい限りである。熱のこもったリード楽器群に追い討ちをかけるかのようなリズム・セクションはさすがである。サックスとユニゾンで弾く納浩一のフレットレス・ベースが唸らせるブリッジパートを挟んで曲は興奮の中、エンディングへ。

ファースト・セットの最後の曲は"Ali's Dance"。ここで小池修がステージへ戻り、ダブル・サックスとなる。ギターの細かいリフに藤陵雅裕のエフェクト・サックスが被さり、シンセサイザーがイントロを奏でるとツイン・サックスが切りこんでくる。この辺りの重層的なリズム部の構成はドクター・ナーヴ等のアヴァンギャルド・アーティストにも引けをとらない緊張感がある。メセニーを思わせるギター・ソロ、低く唸るベース、ワイルドなシンセサイザー・ソロ、そして2人のサックスの絡みなど聴きどころたっぷりの熱い演奏であった。


 
藤陵 雅裕(Sax)
小池 修(Sax)



セカンド・セットのトップは"Haunted Mansion"布川俊樹のギターにGK-2を装着し、ブラス系の音を出すところへ藤陵雅裕のアルト・サックスがエフェクターを通した音でアクセントをつける。キーボードはオーケストレーションを担当。

ドラムスティックでカウント・オフする"Secret Secretary" はギターのリフでリードするミディアム・バップである。中間部はサックスとギターの伸びやかなユニゾンでテーマを聴かせ、そしてディストーションのギター・ソロ。これはスティーヴ・ルカサーも裸足で逃げ出そうと言う決まりようである。

ソプラノ・サックスとフレットレス・ベースの音が心地よい"Yuki-No-Sabaku"。霞の中から立ち現れるように歌い出すサックス。メロウ・トーンのギターがサックスと好対照の音像を作り出す。ピアノ・ソロのリリカルな響きは絶妙にサポートしてゆくベースとともに緩やかな高まりを見せる。クライマックスの後に続くパーカッシヴなブリッジ・セクションはドラムスとパーカッションのコンビネーションが堪能できる聴きどころである。サックスの奏でるテーマと共に静かな余韻を残して終わる。

会場全員を巻き込んだ豪華商品争奪大ジャンケン大会(プレゼントコーナー)のあとはピアノのリードで始まる、小池修のテナー・サックスをフィーチャーした軽快なナンバー"Rhythm Heat" 。納浩一のベース・ソロはキメが効果的なグルーヴ感に溢れた秀逸なもの。古川初穂のピアノ・ソロがパーカッシヴにそしてフリー・フォームに盛り上げるまま、小気味良いリズムをキープしながら疾走するバンドであった。

続く"Chinese Mafia"は8ビートのスネア・ドラムで始まり、サックスとギターのユニゾンへと渡される。カルロス菅野のパーカッションがリズムに幅を与えてくる。この曲の布川俊樹のギターソロはジャズというよりはロック・スピリッツを感じさせるもので、のびのびとした感覚が気持ち良く、今回のライブ最高のソロではなかったかと思わせる。そしてサックスのソロが後を取るが、ギターソロを半ばなぞりながらも、よりファンキーに上昇するかのような展開を見せる。これを圧巻の演奏と言わずしてなんと言おうか。

再びツイン・サックスで演奏する"Jungle Love " 。アフリカン
・ビートを思わせるパーカッションから、ポリリズムを取り入れた展開へ。藤陵雅裕のソプラノ・サックスと小池修のテナー・サックスとのプレイの対比が愉しめる。カルロス菅野のパーカッション・ソロが会場にカリブの風を送りこむと、一転して都会的テイストのギター・ソロが入り、ドラムスのサポートを受けてドライヴ感を増してゆく。心地よい展開だ。藤陵雅裕のソロも出色の出来と言ってよいだろう。そしてツイン・サックスに展開し、フルバンドのクライマックスへとひた走って行く。

 
木村 万作(Drums)
カルロス 菅野(Percussion)

アンコールの一曲目は"Children In The Lost Paradise"。スローなジャズ・コードから藤陵雅裕のサックスがリリカルに入ってくる。メロウなギターがリラックスしたソロを聴かせ、サックスとのアンサンブルで聴かせるエンディングを迎える。

続く"El Dorado"では小池修のサックスがイントロを奏でた後、ラテンリズムがグルーヴを作りだし、ギターがメイン・メロディーを奏でてゆく。ここでもやはりサックスとギターとのユニゾンでメイン・リフが作られる。すると一転してスローなピアノ・パート。端正なメロディー・ラインを奏でる。次にはウォーキング・ベースからフリーフォームなラインまで変化に富んだフレージングを聴かせる修浩一のベース。それがスピードを上げると今度は華やかなラテン・テイストのピアノ・ソロである。キメのブリッジ部を挟み、エモーショナルなギターソロへなだれ込むが、これは音の粒立ちの良い軽快さも併せ持つ良質なソロである。曲に広がりを持たせるストリングスが上手くサポート、ツイン・サックスとのユニゾンでリフのメロディーへと展開し、熱を帯びたまま一気にエンディングへ、と思いきや大きくダイナミックスをつけた終盤部のアレンジは心憎いまでの決まりようだ。

会場を揺るがす拍手と歓声に二回目のアンコール・ステージへと向かうバンド。明るいフュージョン・チューン"Spring Deer"が演奏された。小池修のソプラノ・サックスとギターからピアノへと渡されるソロの表情豊かな展開が楽しい。古川初穂のピアノ・ソロはブリティッシュ・ジャズ・ロックの名バンドMatching Moleに在籍したベテラン、デイヴ・マクレイを彷彿とさせる。そしてサックスとのユニゾンへと展開し、メイン・テーマをリフレインして、ファンの歓声の中、VALISの最後のライブの幕は閉じたわけである。

18年にわたって活動を続けたバンドの最後のライブに居合わせた誰もが、まだまだ弾き続けてもらいたいと願ったことだろう。年に一回でもよい、あるいは数年毎のリユニオンでも構わない、せっかくの曲を封印してしまうのは余りに惜しい。これからのそれぞれのメンバーがそれぞれのバンドやユニットで演奏活動を続けて行くことだろうが、時折はVALISの曲も演奏して欲しいものである。

<Members>
布川 俊樹(Guitar)
納 浩一(Bass)
古川 初穂(Keyboards)
木村 万作(Drums)
カルロス 菅野(Percussion)
小池 修(Sax)

<Guest>
藤陵 雅裕(Sax)






SET LIST

1st Set:
Green Mist(Guitar Solo)〜America(Duo)
Beat Panic
Silent Wall
Hieroglyph
Parrot Cops Coming Soon
Banana Land
Ali's Dance

2nd Set:
Haunted Mansion
Secret Secretary
Yuki-No-Sabaku

- プレゼントコーナー -

Rhythm Heat
Chinese Mafia
Jungle Love

Enc.)
Children In The Lost Paradise
El Dorado
Spring Deer

 

Report by Tatsuro Ueda
Photography by Asako Matsuzaka
Edit by Asako Matsuzaka
Many thanks to
Bluse Alley Japan

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