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LIVE REPORT


Nuovo Immigrato "2nd album release live 2003"
15 June 2003 at Egg Site


バンドスタイルでさらにパワーアップした、新生ヌーヴォ・イミグラートのクールで熱いミクスチャー・ロック
歴戦の勇士たちが集い繰り広げる宴の一夜






Official Site:

Message from Nuovo Immigrato(Egg Siteでのライブ前にメンバーの方からコメントをいただきました)

アフリカン・リズムが会場に流れるなか、ステージに向かう面々。シンセサイザーのストリングス音が徐々にリズムの間を埋めて行くと大谷令文のエレクトリック・ギターがアルペジオを奏で、1曲目の"Surya"とともにステージが始まる。カクテルライトの中からメンバー達の輪郭が浮かび上がってくると下田武男のドラムスがフィル・インし、へヴィーなロックへと一気に盛り上がる。中間部で再びアルペジオ・ギターに戻ってリズム・ブレイクのあと、再びフルバンドへもって行く演出はさすがに手慣れたものである。五十嵐久勝のヴォーカルが安定感のある抑制をもった熱を帯びて響き、今日のステージの興奮を確信させる。

レス・ポールの野太い音で爆発的に始まる"Kururuの肖像"は中期ノヴェラを思わせる。パワー全開で叩きつけるドラムス、しかし中間部のキーボードソロは難波弘之らしい端正なピアノやテクニカルなシンセサイザーを聞かせる。ここでも五十嵐久勝のパワフルなハイトーンはは健在である。思えばシェヘラザードから25年あまりの歳月が過ぎたがこの不変なヴォーカルには驚きさえ覚える。

続く"少年の丘"では最近のリック・ウェイクマンを思わせるピアノソロから、イタリアン・シンフォニック風なシンセサイザー・オーケストレーションに乗せて歌うバラードである。難波弘之のピアノと高橋竜のベースのアンサンブルを聴かせた後はフルバンドへ・・・そして盛り上げるギターソロ。リフレインしてゆくヴォーカル・ラインを中心にクライマックスを迎える様は、70年代に全盛期を迎えたイタリアン・プログレッシヴ・ロックの爛熟を思わせる。

"悠久"は一転してスティーヴィー・レイ・ヴォーンを彷彿とさせるストラトキャスターの音に導かれてのレイド・バックなブルージー・チューンである。リラックスした演奏を繰り広げるバンドをバックにヴォーカルの表情が際立つ。五十嵐の新たな魅力を垣間見ることのできる1曲であった。

 
難波 弘之(Keyboards, Vocal)
五十嵐 久勝(Vocal)

ベースの高橋竜によるスロー・ナンバー"Who Will You Run To"では高橋竜がエレクトリック・ピアノとヴォーカルをとり、代わって大谷令文がベースを担当する。曲はギルバート・オサリヴァンあたりを想起させ、また英語で歌われるヴォーカルもなかなかソウルフルな面を見せる佳曲である。"Who will you run to when you're feeling blue"と歌われるコーラス部分はイギリスの叙情派ロックバンド、バークレイ・ジェイムス・ハーヴェストを思わせる。ヴォーカルとピアノをバックアップするシンセサイザーもさることながら、クリス・スクワイアばりの大谷令文のベースが聴きものである。ドラムスは初期キッスのドラマーであったピーター・クリスのような、ダイナミック・レンジの広い豪快さを感じさせる。

難波弘之の奏でるグランドピアノの華やかで重厚な響きに導かれて始まる往年のグループサウンズの名曲"花・太陽・雨"。ここでは難波弘之がヴォーカルをとる。ソロ・パートでは高橋竜の弾くリッケンバッカー・フレットレス・ベースがもうひとつのメロディーを作り出して行く。続くキーボードソロではCXオルガンがキース・エマーソンばりのリードをとる。するとリズムセクションがそれに応えてブリティッシュ・ロック然とした音へと急展開を見せる。続いて中近東風なコラージュを配してリズム・ブレイク、そして大谷令文のボトルネック・ギター・ソロへ。こうした展開からメインメロディーへともって行くのはさすがにプログレッシヴ・ロックを知り尽くした難波弘之ならではの醍醐味ある構成といえよう。

  
高橋 竜(Bass, Vocal)下田 武男(Drums)大谷 令文(Guitars, Vocal)


ドラムスのフィルがそのままにハードナンバーへと突き進む"Fly Away"。難波弘之と五十嵐久勝の、タイプの違う2人のヴォーカルがユニゾンで歌うところでは、五十嵐久勝の器楽的なヴォーカルが際立つようだ。終盤部でドラムスとベースが作り出す疾走感は、ギターのドライヴ感とあわせて熱い興奮を呼ぶ。

中期ノヴェラをさらに骨太にしたような"マイナス・ゼロ"。乗りの良いハードナンバーであり、昔からのノヴェラ・ファンには一番親しみの感じられる曲ではなかったろうか。

続く"Don't Believe In Anyone"もギターのリフがベースと共に痛快なグルーヴ感を出したハードナンバーである。ドラムスとベースの叩き出すリズムもタイトなスピード感あふれるロックの王道を行くもので、バンドの出すグルーヴ感としては最高の曲と言ってよいだろう。

最後のナンバー"陽が昇るまでに"はEmerson, Lake & Palmer の初期を思わせるシンフォニックなキーボードと強大なドラムス&ベースで幕を開けるマグナム・オーパスである。この曲ではエレクトリックとアコースティックの対比が見事に効果を奏しており、イントロに続くヴォーカル・パートのアコースティック・ギターとピアノとのアンサンブルでは静謐な美しささえ感じさせ、五十嵐久勝の歌う叙情的ヴォーカル・ラインを堪能できる。この後のキーボードパートではキース・エマーソンないしはドイツの名手ユルゲン・フリッツもかくやと言うばかりのクラシカルなオーケストレーションが展開され、壮大な曲想を見事に体現している。激しい展開を見せる大曲だが、まとまりの良さが聞き手を惹き付けて離さない。また、これは全体のアンサンブルをまとめているベースの技量によるところが大きいといえよう。

アルバム1曲目を飾る"Devil's Child"のクラブビートに誘われるように再びステージへ上がるバンド。アンコールはこれまでとは全く違う曲調のこの曲である。DJループからドラムスのキックでフルバンドへなだれ込む。中盤のパートではやはりシンフォニックな展開を見せ、大谷令文のギターも水を得た魚のように自在にビートの中を泳いで行く。こうしたブレイク・ビートからシンフォニックへの展開を自然にこなせるバンドはそうそう多くはあるまい。タイトなリズムの中、ミクスチャー・ロックが繰り広げられるが、難波弘之のオルガン・ソロはブライアン・オーガー風なジャズ・ロックの味わいを感じさせ、ギターはあくまでもブリティッシュ然としたリフで攻めてくる。そしてドラムスはハウスビートを織り交ぜながらもやはりへヴィーでありつづける。

アンコールの2曲目、最後の曲は"いつか、青空のように"。ゲイリー・ムーアを彷彿とさせる鳴きのギター・ラインではじまり、親しみ易いメロディー・ラインのヴォーカル・パートへと一気に進む。タイトルどおりの開放感と、どこか悲しいような希求感を歌う曲だが、それは70年代のイタリアン・プログレッシヴ・ロックを現代的に解釈したものと捉えても良さそうである。難波弘之の言う、「プログレッシヴ・ロック=ミクスチャー・ロック」という図式を見事に現したものといえよう。リリカルであり、へヴィーであり、美しい旋律とほどよい緊張感が織り成すドラマを一曲の中に封じ込めた佳曲である。

難波弘之のセンス・オブ・ワンダーと五十嵐久勝のノヴェラを融合させたファーストアルバムから、今回のワールド・ロックとでもいうべきバンド・サウンドへと深化したヌーヴォ・イミグラートは、ロックのもつ柔軟性を最大限に活用したステージを聴かせてくれた。コマーシャリズムにより細分化され、サブジャンルの蔓延したロックの現状にあって、包括的でありながらこれほどまでにロックの根幹たる創造性を感じさせてくれるバンドは貴重であり、素晴らしいと感じさせられたライブであった。


Members:
難波 弘之(Keyboards, Vocal)
五十嵐 久勝(Vocal)
大谷 令文(Guitars, Vocal, Bass)
高橋 竜(Bass, Vocal, Keyboards)
下田 武男(Drums)


< Set list >
1. Surya
2. Kururuの肖像
3. 少年の丘
4. 悠久
5. Who will you run to
6. 花・太陽・雨
7. Flyt away
8. マイナス・ゼロ
9. Don't believe in anyone
10. 陽が昇るまでに

Enc)
Devil's Child
いつか、青空のように



Message from Nuovo Immigrato


*Egg Siteでのライブ前にメンバーの方からコメントをいただきました。

Questions:
@今日のライブに向けての抱負は?(今回のツアーの感触は?)
AあなたにとってNuovo Immigratoとは?


五十嵐 久勝
@ 神戸はこのメンバーで最初ということもあって、他のメンバーもそうだと思うんですが、個人的にも、ものすごく楽しみにしていまして、バックのメンバーのみなさん、サスガだなという感じで、とっても楽しくやれました。ちょっと気合が入りすぎて暴走しましたが、本当に楽しい・・・こんなライブは、本当に初めてじゃないかな?という感じでした。それと今回、東京でやることについては、神戸から1週間あったこともあって、少し余裕もありますし、今日は神戸以上に、自分のためにも楽しみたいと思っています。

A正直言いまして、最初、難波さんとのユニットという形で始めたので、ちょっと仕事っぽい感じになるんじゃないかな?と思っていたんですが、今回のメンバーではレコーディングの時も、なんか子供が遠足に行くみたいな、そんなワクワクした感じが、とっても新鮮に、途切れることもなく続いています。僕にとっては初めて出逢った、生涯を通じて続けていきたい、と思うバンドになっています。今は、Nuovo Immigratoが僕にとって唯一の場所のような気もしています。こんなに居心地がよくて、創造性のあるバンドに巡り合えて、僕は今とても楽しい時間を過ごしていると思います。


難波 弘之
@ 神戸ではアンジーさんも私もちょっと緊張してしまって、楽しかったんですが、少し堅かったかもしれないですね。今日はその分、もうちょっとリラックスしてできるのではないかと、思っています。

A 以前はアンジーさんと2人のユニットという感じだったんですが、今回、レコーディングの時などもみんながアイデアを出してくれて、全体として有機体になった、バンドになった、という感じです。サウンドとしても、前よりもちょっとロックっぽくなっていると思います。ぜひ楽しんでください。


大谷 令文
@ 今回のライブは2回だけでしたが、もっと回数多くやりたかったですね。マリノのミックスダウンと重なっていたため、集中するのが難しかったです。

A 一言では言い表せませんが、これからも幅広い音楽性で、長い活動ができるバンドであってほしいです。


高橋 竜
@神戸を終わってとりあえずホッとしています。今日も気を緩めずに神戸以上の演奏をしたいと思っています。

ANuovoは僕にとって、いろいろと自由にできて楽しいですね。ただ曲が長くて大変です。

下田 武男
@関西は気負いがあったんですが、結果的にはそれがいい方向にはじけたかな?という感じがありました。今回はエッグサイト(ライブハウス)ということで、関西のチキンジョージ(ホール)とは空間の違いがあって、ステージ側から発したものがフィードバックしてくる感触というのが、もっとダイレクトなので、その辺をこちらもピュアに伝えられれば、と思っています。

A一言で言うのも難しいのですが、先輩方に囲まれて、自分のステップアップできる機会を多々与えていただける場所であり、勉強の場であり、自分にとって理想郷的なバンドでもあり、、と言ったところです。

Report by Tatsuro Ueda
Interview by Asako Matsuzaka
Photography by Asako Matsuzaka
Edit by Asako Matsuzaka
Many thanks to
Cool Corporation, Jeo Studio, Egg Site

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