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LIVE
REPORT
Natalie Cole
June 16 2003 at Blue
Note Tokyo
世界のジャズ界に君臨するヴォーカリスト ナタリー・コール
深く豊かなヴォーカルは感動を呼び、"Unforgettable(忘れ得ない)"な一夜となった
Members:
ナタリー・コール(ボーカル)、テリー・トロッター(ピアノ)、奥本亮(キーボード)、マイケル・ミラー(ギター)、
ケビン・アクスト(ベース)、ジョニー・フライデー(ドラムス)、マイケル・ミショー(バック・ボーカル)、
キャティ・アダムス(バック・ボーカル)
< First Set >
ステージはインストゥルメンタル・ナンバー"Our Love is Here to Stay…"でスタート。弾むような4ビートにのってピアノのテリー・トロッターが流れるようなパッセージを聴かせ、マイケル・ミラーのギターソロも軽やか。奥本亮のオルガンソロはタイミングよく軽妙で心地よいオルガンサウンドが広がる。コンパクトながらセンスよいドラミングのジョニー・フライデー。アップライト・ベースを演奏するケビン・アクストとのリズムコンビネーションもぴったりと合っている。まさに名手揃いのバンドメンバーたちである。
もう1曲、インストメンバー"Love Letters"を演奏した後、いよいよナタリー・コールの登場。客席の間を通ってステージに進む姿にもスターの風格が漂う。最初のナンバーは"What a Difference a Day Made"。伸びのある柔らかいヴォーカルが広がり、会場はなんともいえない優しい雰囲気に包まれた。
「リラックスして楽しんで」というナタリーのMCのあと、"Almost Like Being in Love"へ。イントロ、奥本の奏でる透明感のあるストリングスが美しい。ナタリーの豊かなヴォーカルはより深みを増し、余裕を感じさせた。
ベースとヴォーカルが静かに語り合うようにして始まった"Sandman"。やがてバンドサウンドが厚みのあるビッグ・バンド・サウンドへと変身。目を閉じるとまるでビッグ・バンドが目の前にいるかのようだ。絶妙なグルーヴ感、全体のヴォリュームが上がり、奥本の演奏するリアリティに富んだブラスパートは、全体のアンサンブルに華やかさを加えた。
続く"Route 66"もダイナミックなビッグバンドサウンド。アップテンポに楽しく乗り、ナタリーのヴォーカルも弾むようである。そしてコーラスとの掛け合いも軽快に、リズミックに歌いきった"Straighten Up and Fly Right"では、ドラムとベースのリズムコンビネーションが見事。そしてテリーはセンスのよいパッセージを散りばめた、味のあるピアノソロを聴かせた。
スタンダードナンバーを堪能したステージであったが、最も印象的だったのは、"Smile"と"Unforgettable"。椅子に座ったナタリーが、静かに歌う"Smile"は、美しく感動的で、涙が出そうになる。アコースティックギターに持ち替えたマイケルのメロディアスなソロには情感がこもっていた。そしてナタリー自身が「Very special song」と紹介した、"Unforgettable"。このあまりにも有名な曲を、映像に映し出されたナット・キング・コールとのデュエットで聴いた。まさに珠玉の一瞬であった。
憂いを秘めたマイナーチューン"Tell Me All About It"では素晴らしいスキャットも披露。どのようなフレーズを歌っても、いつも丸みと柔らかさを失わないヴォーカルだ。そしてラストナンバーの"Orange Colored Sky"を軽快なテンポにのって熱唱した後、"Unforgettable"が流れる中、ステージを後にした。
この日、熱烈なアンコールに応えて歌ったのは"Love"。手拍子が響く中で意気揚々と歌い上げ、楽しい雰囲気でのエンディングとなった。
Set
List)
1. Our Love Is Here to Stay
2. Love Letters
3. What a Difference
a Day Made
4. Almost Like Being in Love
5.
Sandman
6. Route 66
7. Straighten Up and Fly Right
8. Smile
9.
Unforgettable
10. Tell Me All About It
11. Orange Colored Sky
12.
Unforgettable
Enc)
Love
Report
by Asako Matsuzaka
Many Thanks to Blue
Note Tokyo
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Second Set >
ナタリー・コールが現代ジャズシーンにおいて最も秀でたジャズ・ヴォーカリストであることは言うまでもない。あのナット・キング・コールの娘として生まれ、著名なジャズ・アーティストの演奏を聞いて育ったということが彼女のヴォーカル・スタイルに影響を与えたことは疑いの余地がないが、それだけで評価することは彼女の才能を充分に評価し得ていないことになる。
今回のブルーノートでのライブもそうであるように、ナタリー・コールはしばしばナット・キング・コールの娘として紹介されてきた。古くからのジャズファンにとってはナット・キング・コールの名はそのベルベットの歌声とともにスタンダード中のスタンダードとして特別な思いを抱かせるものであり、その意味においてはプロモーションとして必然性のあることだろう。しかしながら、フュージョンやミクスチャー・ジャズによってジャズに親しんできた新しい世代のジャズ・ファンにとってはむしろナタリーのほうが現代のスタンダードとして映るかもしれないし、そしてそのヴォーカルと音楽性によって独自のスタイルを築いたジャズ・シンガーとして評価されるべきだと言って良いであろう。また、本人が意図するとしないとに関わらず、新旧のジャズ・ヴォーカル・スタイルの橋渡しとしての彼女の存在も特筆すべきではないか。その歌声の中には40年、50年代のクラシックなエレガンスと共に現代的なファンキーな要素が同居しているのである。
今日のライブでは半世紀以上にわたってジャズが辿ってきた道筋がナタリーを通じてステージ上に繰り広げられていた。ステージにずらりと並ぶバンドがキーボードの奥本亮によるインストゥルメンタル曲"Guanabara Bay"を奏でたあと(奥本亮は自身のバンド、スポックス・ベアードやソロ・アーティストとしてその手腕を世界的に知られた人である)、"Tell Me All About It"のピアノのイントロに導かれてナタリー・コールがステージに登場。その第一声から会場はスムースな名曲の世界に包みこまれる。
続いてピアノとストリングス・シンセサイザーのハーモニーが絶妙な"I Haven't Got Anything"、ナタリーとバック・コーラスとのアンサンブルが聴かせる "Two for the Blues""Route 66"では シンセサイザーの奥本亮、ピアノのテリー・トロッター、ベースのケビン・アクスト、そしてドラムスのジョニー・フライデーの順にバンドを紹介、デューク・エリントンの名曲"I'm Beginning to See the Light"、そして"Like a Lover""Too Young""Smile"と続き、そしてナット・キング・コールの姿がスクリーンに映し出され、ナタリーとデュエットで歌われる "Unforgettable"。この曲にはマイケル・ミラーのギターソロをフィーチャーした新しいアレンジが施されている。
拍手と歓声で沸き返る中、「この曲は紹介せずともはじめの歌詞でわかりますね」というナタリーの紹介で始まる曲"Paper Moon"。曲の終わりでナタリーはステージを降りるのだが、曲がリフレインすると再びステージへ。アンコールはベースとドラムスがリードする上にキーボードがミステリアスな雰囲気を加える"Calling You"そして番の"his Will Be (An Everlasting Love)"と続き、歓声と拍手の渦の中ステージは幕を閉じた。
今回のステージではトップクラスのミュージシャンが完璧とも言える演奏を聴かせてくれ、またナタリーは機嫌良く活気に溢れた様子で、ステージから観衆と言葉を交わすなど会場の一体感を高める演出も見せてくれた。父ナット・キング・コールの名があろうとなかろうと、ナタリー・コールの素晴らしい歌声が超満員の観衆に残した印象はまさに「Unforgettable(忘れ得ない)」ものであったといえよう。
Set List)
1. Guanabara Bay
2. Tell Me All About It
3. I Haven't Got Anything
4. Two for the Blues
5. Route 66
6. I'm
Beginning to See the Light
7. Like a Lover
8. Too Young
9. Smile
10. Unforgettable
11. Paper Moon
Enc)
Calling You
This Will Be (An Everlasting Love)
Report
by Tatsuro Ueda
Many Thanks to Blue
Note Tokyo
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