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Artist Press Vol.00 > Live Report

神保彰 DRUM PERFORMANCE Vol.11
"Iriomote Wild Cat Watching Tour"

Roppongi Pit Inn 23rd December 2000 PIT INN

店内に入ってまず目に入るのは真中に据えられたドラムセット。客席はドラムセットを囲むようにセッティングされている。特にステージ上にセットされた客席に座ると神保彰のドラミングを真後ろから見ることができるようになっている。これは彼にあこがれるドラマーにとっては、またとないチャンスであろう。

実は彼のソロパフォーマンスを聴く(見る?)のは初めての体験である。「とにかく凄い」といううわさは兼ねてより聞いていて、自分なりのイメージというものはあったのだが、実際はそんなものではなかった。

ドラムセットを囲んだオーディエンスの期待のなか、さっそうと、さわやかに神保彰が登場。一瞬の沈黙のあと、がっちりとしたビートを刻みだす。1曲目、"Sunshine Of Your Love"。自らのビートに合わせて、おなじみのへヴィなリフをたたき出していく。フレーズの区切り区切りで、広がりのあるスペイシーな効果音を組み合わせて変化をつける。

この曲は「リフを中心にぐいぐい押していく」という、比較的シンプルな構成だが、目をつぶって聴いていると、とても「全ての音を1人でたたき出している」とは思えない。というよりも、前もって聞かされていなければ、じっと見ていても「少なくとも、部分的には打ち込みを使っているのかな?」と思ってしまう。

一転して2曲目"New Song 1" は明るい広がりをもった宇宙的なイメージのオリジナル曲。うねるベースライン、シンコペーション基調の明るいバッキングの上に、スペイシーなシンセ音でメロディを奏でる。曲が進むにつれ、それぞれのパートがフリースペースを存分に使って動き出す。そして全体との掛け合いの中で、さまざまなドラムバリエーションを聴かせる。

"New Song 2"。ゆったりとした、どこか摩訶不思議?なイントロを受けて、ドラムが16ビートを刻む。「いったい何が始まるのかな?」そんな期待を持つ。しっかりとした、心地よいビートの中、無国籍風で不思議なイメージのハーモニーはどんどん広がり、そこに空けられた空間の中、パワフルで縦横無尽なドラミングを存分に堪能できる。

これだけのシステムをコントロールしながらも、彼自身、ドラミングを実に楽しんでいて、自らの持つエネルギーを惜しみなく回りに発散させていく。

"One note samba"はちょっとコケティッシュなかわいい曲。明るくテンポのよいメロディ&ベースラインで会場全体がなごむ。

そしてスティーヴィー・ワンダーの"Isn't She Lovely?"、思わず一緒に口ずさみたくなる。途中、ドラム・ヴァリエーションを聴かせたあとはベースをループさせ曲に変化をもたせる。

間を空けずに"Mambo No.5"。タム中心のヴァリエーションのあと、左足でルンバ・クラーベを刻みながらのソロを展開。

MCをはさんで、次の4曲は年末、新世紀を迎えるにふさわしい曲を選曲。

1曲目は「歓喜のうた」(ベートーベン「第九」より)。ルンバ・クラーベを刻みながらのラテンアレンジである。

「ツァラツストラはかく語りき」(R.シュトラウス)は壮大なオーケストレーションをイメージさせながらのリズミックなアレンジ。途中、ハイハットを刻みながらのタイトソロを展開。

雰囲気を変えて、"Regulete Your Mind "(オリジナル)。少しJazzyなしゃれたエレピのフレーズが印象的。途中でテンポが変わり、リズミックに女性ヴォーカルが入る。ダイナミックなドラムソロ、そして広がりのある美しいディレイ効果、ポイントで使われるヴォーカルサウンド、と次々に変化していくのが楽しい。

"Millenium"(オリジナル)。約20分の大作。ストリングスがゆったりと歌うなか、さまざまなヴァリエーションを交えながらリズムを刻んでいく。深みのあるエレピがバッキングを刻んだあとで、曲は動きす。時にコミカルに、時にアップテンポに、そして時にゆとりを持って、、、さまざまな表情を見せる。そして曲調が変わるにつれて、そのドラミングもより激しさを増していく。

再びMCをはさんで、次は民謡メドレー。 冒頭、エレピのハーモニーが響く中、「まりと殿様」。「竹田の子守唄」ちょっと中国?をイメージさせるようなハーモニーアレンジ。アップテンポのリズムにのって「八木節」、威勢のいい節回し。ゆったりと聴かせる「こきりこ節」、心にしみるメロディ。津軽三味線を連想させるイントロが奏でられる。鼓、合いの手が入り「ソーラン節」スタート。リズム&ベースパターンがユニークだ。

世界が変わって、どっしりとしたリズムの中、"Mission Impossible"のテーマが流れる。見事な"アンサンブル"だ。

オリジナル曲"New Song 3" (オリジナル)のあとは、いよいよ"Drum Solo"。 やわらかくしなる腕の動きに、つい見とれてしまうが、とどまるところのない、凄まじさである。そのパワーとエネルギーは底知れないものを感じる。これだけパワフルに叩きながら、まるでどこにも力を入れていないようである。常にバランスがとれていて、乱れることがない。

迫力満点の"Drum Solo"のあと、ライブはいよいよ終盤。 "Beatribe"(オリジナル)を演奏したあと、ラストナンバーは「未知との遭遇のテーマ」。まさに映画のラストシーンを見るようである。宇宙船とオーケストラが音楽で対話する・・・その映像が目に浮かぶ。そこには宇宙的な雄大さ、そして暖かさを感じさせるファンタジーの世界が描かれていた。最後の一音が次第に消えていくところは、まさに宇宙船が飛び立ち、そのエンジン音が遠のいていくようであった。

アンコールに応えての"Come Together"は間奏部に雅楽の合いの手も入るリユニークなアレンジ。最後までオーディエンスを魅了した。

とにかく圧倒されっぱなしの2時間であった。トリガーシステムをコントロールしながらのドラミングテクニックにまずは驚き、そしてオリジナル、カヴァー曲とも、細部まで練りあげられたアレンジ能力の高さ、アイデアの豊富さ、そしてそれら全てを総合した表現力に感動を覚えた。

また、彼はまるで「空間」というキャンバスに音を自在に散りばめているかのようでもある。「すぐれた絵画には無駄な色がひとつもない」という話を思い出す。彼の場合も、その音色の選択といい、音の配置といい、まさに見事である。そしてオーディエンスはドラミングテクニックやシステムコントロールではなく、彼が作り上げる世界全体に引き込まれて行く・・・。

私と同じく、うわさで聞いていて、もしもまだ体験されていない方がいらっしゃったら、ぜひぜひ、このソロ・パフォーマンス("神保彰ワールド"とでも言うべきか?)を体験させることをお勧めします!


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Set List:

Sunshine Of Your Love
New Song 1 (Original)
New Song 2 (Original)
One note samba
Isn't She Lovely? Mambo No.5

歓喜のうた(ベートーベン「第九」より)
ツァラツストラはかく語りき
Regulete Your Mind (Original)
Millenium (Original)

まりと殿様
竹田の子守唄
八木節
こきりこ節
ソーラン節
Mission Impossible

New Song 3 (Original)
Drum Solo
Beatribe (Original)

未知との遭遇のテーマ

Encore)
Come Together
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写真提供:CYBERARK
レポート:S.Hatano


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